ソロ・アンサンブル

寂しい陽だまり

プラザイースト(さいたま市緑区)

今年も「さいたま市ジュニアソロコンテスト」のシーズンがやってきた。

しかし、例年なら参加者とその家族や先生、そしてスタッフでごった返すロビーもホワイエも、今年はご覧の通り。妙にこの陽だまりが寂しく感じられる…。

このコンクールは、参加者全員が実際に審査員の前で演奏できるというのが謳い文句であった。だがそれも今回は新型コロナウィルスには勝てず、遂にテープ審査となってしまった。

しかしそれでも開催できたし、こうしてまた審査員として招んで貰えたのは、実にありがたい限りである。何より録音でも何でも、今年も市内の小・中学生達の熱意ある演奏が聴く事ができて、本当に心から嬉しかった。

感染予防対策

ただ単に録音を聴くシステムにするのみならず、勿論定番の感染予防対策もなされている。

審査員の控室はこれまでは狭い楽屋だったが、今回は広い多目的ホール。ドアは開けっぱなしで、常に換気されている。入場時には検温と手指の消毒、そして1人1台長椅子が用意され、協議するため大きめの三角形に配置。弁当やお茶・軽食等は用意されているが、基本的には自分で一箇所に取りに行く。審査員とスタッフは出入り口すら別々に分けるという徹底ぶりだ。

演奏あれこれ…

「テープ審査」とは今時相応しくない表現だ。正しくは「音源審査」、応募者が提出する記録媒体は今やCD-Rもしくはメールの添付ファイルだ。この辺りは昔に比べて劇的に便利になっている。

そうして集まった演奏録音は、楽器別に会場が分かれて審査される。木管楽器は「映像シアター」にて。勿論非公開なので、誰も居ないガランとした客席後方に審査員が座り、スピーカから流れる演奏を聴き、講評を書き採点する。その体はまるで自分達が聴音試験を受けているようである(笑)

…そうして聴いているうちに、ある事に気がついてきた。そうか、初めての音源審査、慣れていないのは自分達のみならず、参加者側もなのだという事。

少なくとも木管部門は、ほぼ半分以上はどうやらスマホのような手頃な機器で生録音しているようだ。再生が始まると、必ずといっていい程最初に「サー」というホワイトノイズ、徐に演奏が始まるが、この「サー」が結構邪魔をしている。妙に音が大きかったり小さかったり、多分マイクの位置が良くないのだ。かといって曲の強弱はスマホのリミッター機能により、殆ど判らない。中には演奏の後方で色々な音が聞こえる。話し声、車の走る音、酷い時には誰かがラッパをさらっている…。

かなりはっきりとした吹き間違いがあったりもするが、彼(彼女)等にはそもそも録り直しという発想が無いのだろう。何回も録って一番良いテイクを出してくれれば良いのだが…。

しかしながら、そんな録音状態の悪さには自分はひとつも迷惑なんて感じていない。寧ろ聴いていてとても面白く、そして楽しかった。それに演奏自体の優劣はそれでも意外とちゃんと判るものだ。中には畏らく本当に、ちゃんと録音できる時間と環境が得られなかった子もいるだろう。コロナ禍であまり身動きの取れない中で、よくぞ演奏してくれたと、寧ろ自分としては敬意を表したい位だ。

緊急事態宣言が延長されて

例年なら500人を超える応募があるのだが、今年は全楽器で167名と激減した。理由はいろいろ考えられるが、締め切り日がとても早かったのもそのひとつかも知れない。そして何より、やはり満足に練習できる環境が得られていない子が多いのだろうとも察する。

かくして木管楽器は本選に十数名が進んだが、例年通りの対面審査だった筈が、緊急事態宣言の1ヶ月延長により、これも音源審査となってしまった。生徒達は再びステージで生で演奏できるのを目標としていただろうに、何だか不憫である。

つくづくあの中国発生のウイルスが憎たらしくてしょうがない。

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