掃除棒あれこれ
先日のデュオコンサートの会場は、その構造上控え室と舞台袖が離れているので、曲と曲の間にいちいち控え室に戻る事はできない。できなくはないが、なるべくならスムースな進行の為にはそれは避けておきたい。となると、袖の方にそれなりの準備をしておく必要がある。持ち替えの楽器とか楽譜とか譜面台とか。
ところが、コンサート後半で、ある大切な物を控え室に置き忘れた。掃除棒だ!これがないと曲間で楽器の水滴が拭えない。自分で取りに行くのはみっともない。なので、橋爪さんのギターソロ前のMC中に、スタッフに急遽取って来てもらい、事無きを得た。
管の内部に溜まる液体には多少は唾液も含まれているが、殆どは、外気との温度差の結露でできる水分である。これが管内に溜まると筒先からポタポタと落ちてくる訳だが、中にはトーンホールから出て来るのもあり、これが中々厄介だ。下手するとキィとの間に膜状のバリアを張ってしまう事もある。これで違う音が出てしまうアクシデントが、過去に何度かあった。
だから、管内の水分をこまめに拭き取るのは大切な事なのだ。実は微妙ながらも楽器の鳴りとか音色にも影響がある。
とは言え、その度にいちいち楽器をバラしてまた組み立てるのは、ズボラな自分には面倒な事だ。なので、少なくとも胴部管と足部管はつないだまま差し込める長さの掃除棒(写真左)を作り、家ではこれを使っている。
しかし鞄には入らないので、仕事用には真ん中の標準サイズの掃除棒。これも自作だが、ペン等で尻の部分を押せば、同じように下は繋げたまま反対側まで届くよう、この尻の部分に凹みを作ってある。
ところで水滴の拭い方は、頭部管と胴足部管ではちょっと違う。頭部管では当然突き当たりまで掃除棒を突っ込んで引き抜く。銅足部管ではそのまま一方通行。これが最も効率が良い。
ところが某メーカーから全くフルートをバラさずに一気に通せる長い掃除棒が発売され、試作品を貰ったので試してみた。
結果は×。水滴は頭部管に最も沢山溜まる。それを吸ってビショビショになったガーゼが、まだ濡れていない足部管とかを通って出て行く事になってしまう。真ん中で2つに分かれるようになっているが、繋げると70cmと頗る長く、仕事場ではハッキリ言って邪魔である。専用の布は多分吸水性や手触り、デザイン等考慮されたものとは思うが、何かと使い勝手が悪い。幾ら何でもフルに長くしちゃうと、やっぱり返って手こずるのだ。そんな訳で我が家ではお蔵入り。
話はかわって…
自分の場合、掃除棒にはガーゼハンカチを巻いているが、先の頭部管に差し込む場合、その先端が上手く内部の反射板の隅々にまでガーゼが行き渡るよう、工夫して巻いている。だが!昔、某プロオケのプレーヤーだった方で、その「角の水滴は残しておいた方が音が良い」と仰る先生がいた。そこまでマニアックな説、検証してみたが、どうにもその違いは判らない。
そして最後にピッコロの掃除棒について。ピッコロは楽器が小さいだけあって、水滴の溜まり方もより頻繁である。こうなるともう、先程の「頭部管Uターン・胴部管一方通行」なんて事も言ってられない。自分が使っているのは、写真右側にある、今の愛器を買った店の店長が廃材で作ってくれた物。
ピッコロなんて出番が少なくて待ち時間だらけなのがしょっ中だが、たまにバレエ曲だったりすると殆ど吹きっぱなしということもある。そんな時、僅かな曲間でサッと差し込んでスッと抜く。これ、今だに大変重宝している。