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追悼 冨田勲さん

「ピパーピポッピッ パピーポピッパッ ピポッピパッピッ ポー」
これを聞いて「ああ、あれか」と、判る人は判るだろう。ドビュッシーのピアノ曲集「子供の領分」の最終曲「ゴリウォーグのケークウォーク」のシンセサイザー編曲版に出て来るメインテーマの“歌詞”だ。中学生の頃、親友のY君が「こんな面白い音楽があるゾ」と教えてくれたのがきっかけで自分もハマり、2人でよくこの電子音楽のLPを聴いたものだ。それ以来何かと言えば「ピポッピ」「パピッポ」とか意味のない会話でふざけてみたり…
このLPの作者は言わずと知れた冨田勲氏。ドビュッシーの作品集で他に「月の光」「パスピエ」「雪の上の足跡」等、幻想的なアレンジが並ぶ。
他にも「展覧会の絵」「火の鳥」「禿山の一夜」「ボレロ」「惑星」等、沢山のシンセヴァージョン聴いたものだ。中でも「展覧会〜」のLPジャケットの裏側が大好きだった。

まるで宇宙船のコクピットのような壁面一杯のシンセサイザーを背にしてドヤ顔の冨田氏。この巨大で高額な“装置”を米国で買い込んで帰国したものの、流石にこの怪しい機材は当時の税関をパスするのにひと苦労したそうだ。“疑惑”が晴れるまでの間、空港での保管料も結構な額がかかってしまったと言う。
しかし驚いたのは、これ程の装置を使っても、出てくる音は単音のみで和音とかが出せない事。つまり1曲作るのに、メロディーを何度も何度も重ねてあの壮大なサウンドを作り上げていくそうだ。気の遠くなるような地道な作業なのだ。
とまあ、これはそれこそ今から40年も前の話で、その後シンセサイザーはどんどん性能が良くなると同時に小型化され、あんなにデカい装置が今では遂にアプリになってしまった。似たようなアプリなら、自分も既に何年も前からダウンロードして持っている。しかも無料で。
なので、ほぼ同じような事が今やiPad1枚でできちゃうかも知れないが、やはりこれは先駆者の道標があればこその話である。
その意味で、本当に冨田勲氏は凄い方であった。自分の今の仕事(演奏・作編曲)にも氏の影響が少なからずあると自負している。
冨田勲さんが今月5日に亡くなられたというニュースを聞き、自分の青春時代の象徴がまた1つ去ってしまったような気がして、何だか淋しい。本業は作曲家で、あのNHKの「新日本紀行」のテーマ音楽などが有名だが、昭和から平成にかけての電子音楽の巨匠であった。
心から御冥福を祈る。

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