オーケストラ, 楽器・機器・道具, 藝フィルレポート スライドピッコロ 2016年5月13日 / オーケストラでフルートが持ち替える楽器といえば、普通はピッコロかアルトフルートだが、たまにバスフルートやリコーダーに持ち替える事もある。だが最近の現代曲ではその範囲を超える事もある。 「スライドホイッスル持替え」 昨日のオーケストラ、作曲科学生による新作発表では、自分のパートに「スライドホイッスル持ち替え」ってのがあった。通常、こういう特種な楽器は作曲者が用意してくれることになっていて、差し当たってそれを吹いてみるつもりだったのだが、リハで出してきたのはこんな代物。 実は全く同じ物は自分も持っている。確かにスライドホイッスルではあるが、プラスチック製のこれははっきり言って玩具である。自分の曲なのに随分とテキトーなもんだなとは思うものの、演奏会用のもっとちゃんとしたスライドホイッスルの存在をどうやら彼女(作曲者)は知らないようだ。とにかくこんな物では仕事にならない。で、こんな事もあろうかと、自分が用意したのは、ビニールテープを巻きつけた丸鉛筆。これをピッコロの頭部管に抜き差しして音程を変えながら吹くのだ。音域は指定されていないので、となるとあんなオモチャよりはこちらの方が音が数百倍良い。しかしながら、機能的には多少難点が伴う。そこで折角なので、もう少しその辺について拘ってみた。リハの後、アクリル製とアルミ製の2種類の丸棒を買い、それぞれスウェード調のシートを巻き付けたり剥がしたり、あれこれと検証してみた。 左がピッコロの頭部管で、右は上からアクリル、丸鉛筆、アルミ棒 その結果、今回は単純に(何も巻かない)直径10mmのアルミ棒が一番音色が良いという事が判った。ただ、金属製なので不用意にピストンさせると管の内部を傷つけてしまう。そこで接触部をとことん磨いて滑りを良くする。何も内径にぴったり合わせる必要はなく、むしろ少し遊びがある方が機能的にも音色的にもベターだ。後は音程に合わせてマジックでチョンチョン…と印をつけていく。 かくして、今回はこの「スライドピッコロ」が効力を発揮した。実はこの奏法は自分のオリジナルではない。自分の記憶しているところでは、中国の作曲家、譚盾(タンドゥン)のオケ曲でこれがあった。何にせよこれ、また何処かで使う機会があればいいなと思う。また今回のこの試行錯誤により、新たなるピッコロの可能性を発見した!詳細はここでは省くが、その意味では今回の玩具の件はいわば「怪我の功名的」な出来事であった。 関連記事100曲またまたスライド・ピッコロの話