未分類

42年目の開花

4年前に事故に遭って以来、ずっとお蔵入りだったハンミッヒのフルートを、ようやっと昨年末に修理に出し、この度遂にオーバーホールして仕上がって来た。

ドイツ製「アウグスト・リヒャルト・ハンミッヒ」この楽器は自分が高校生の時に買って貰い、その後11年間吹いていた。G大の入学〜卒業・オケやコンクール等、十分活躍してくれた。その後、現在のヘインズに変えた訳だが、例えばこのメインのヘインズを修理やタンポ取替え等で“入院”させている場合などは、また戸棚から引っ張り出して吹いたりしていた。

そうして偶々この旧ハンミッヒを使っている時に、あんな悲劇が起こってしまった訳である。

※閲覧注意 胴部管以下も酷いダメージを受けた。

だが省みればあの事故のみならず、旧ハンミッヒについてのメンテナンス、とりわけタンポの扱いについては自分でもあまりよく解っていなかった故、相当無頓着であったと思う。ヘインズを買ってからは尚更で、当然の事ながら、もう使わないのにタンポなんか取替える必要もなかろう、なんて…。

しかしながら、若い頃あれ程お世話になった銘器。何とかしなくてはと常々思っていたところで、例のウィルス騒動による空白時間。これを機に普段からお世話になっている“主治医”のリペアマンに、修理だけでなくタンポも含めた完全オーバーホールをお願いした次第である。

そして遂に全快!

ハンミッヒの中にも色々なブランドがある。「アウグスト・リヒャルト(AR)」の他にも「ヘルムート・ハンミッヒ」「ヨハネス・ハンミッヒ」「フィリップ・ハンミッヒ」等。ARハンミッヒはどちらかというとピッコロのブランドの方が有名だが、フルートになるとかなり特徴的な外観になっている。

myハンミッヒは各キィは平べったく、余計な飾りは省き、機能的は充実し過ぎている位だ。具体的には、
大きなGisキィ
G-Aトリルキィ
Cis-Disキィローラー
ダブルEメカニズム(これはかなり珍しい)
これらの結果、キィ同志を繋ぐポストが増え、多い所では計6本も走っている。

だが実はそれよりも、キィの内側の構造に他社製とは違うマニアックな特徴がある。詳細は省くが、これがなかなかリペアマン泣かせらしい。

実際、仕上がりたての楽器は全然鳴らなかった。吹いているうちに何となく鳴ってきて、そのうち馴染んでくる。でも次の日には元に戻っている…そんな状態が3ヶ月程続いた。そうして、そろそろ落ち着いてきたかなという時に改めて調整。新しいタンポというものは吹き込んでいくうちに定着するものだが、このハンミッヒ程それが顕著に表れる楽器はない。

さあそして!myハンミッヒはいよいよその本領を発揮し始めた。思えばそもそも、若い頃の自分は、笛の音を“響かせる”術については未熟であった。漸く自分の“音色”を確立するようになれた頃には、既にこの楽器から離れていたし、先述のように偶にケースから出しても既にタンポはボロボロ、挙げ句の果てにはあんな大怪我を負って4年も冬眠する始末。

言うなれば、この楽器は手にしてから42年も経って、漸くその本来の響きを発するようになった訳である。オケで例えばマーラーとかストラヴィンスキーとか吹くだけのパワーがあるかと言えば、それは少し足りないかも知れない。しかしながら本来フルートにそんなパワーを求めるものではないし、何といってもこの楽器、メチャクチャ綺麗な音色だ。こんなに素晴らしい楽器だったのかと、改めて思うのである。

しかしながら、勿論普段はヘインズがメインである。どんなにいろんな機能が付いていても、ヘインズのリングキィ&H足部管には叶わない。だがこれからは、この2本を上手く使い分けることによって、それぞれが最良の音色を保てるよう、長持ちさせなくては…。

もうそんな年代に来ていると思う。自分も楽器も。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です