スタンダード奏楽堂デビュー(?)
デュオリサイタルを2ヶ月後に控え、大分古くなった愛器ヘインズのタンポを全取り替えに出し、その間はスペア、つまり以前使っていたリヒャルトハンミッヒを家の奥から引っ張り出して使う事に。長年使っていないのでこれも当然タンポその他、もうかなりガタガタである。目立たないパートとか、そういうあまり活躍しない仕事の期間を狙ってヘインズを入院させる訳だが、今回このスペアのハンミッヒに恐ろしい悲劇が起こってしまった。
奏楽堂にてオケのリハが始まる30分程前、持ち替え用の椅子に何気なくマイハンミッヒを置き、隣の人と話をしようとしたところ、その椅子が楽器ごとひな壇から転げ落ちてしまった!一瞬の出来事。アッと声を上げた次の瞬間、愛器は椅子の下敷きになっていた。慌てて椅子をどかしたら、その下から頭部管がペシャッとひしゃげた変わり果てたフルートが現れた。ショックだがとにかくリハ開始までに代わりの楽器を調達しなければならないから、すぐ大学の楽器係へ。そこにはボロ楽器ばかり並んでいたが、とりあえず使えそうなのを1本借りてその日は凌いだ。
とんだ災難だが、それでも不幸中の幸いという状況が3つ程ある。一つはここがG大なのですぐに代わりの楽器があった事。もう一つは壊れたのがたまたま代替楽器だった事、そしてもう一つは何といっても自分の楽器だった事だ。もしまかり間違えて他人の楽器を、自分の手が当たったか何かして壊していたら、或いは借りていた楽器だったら…?考えただけでもゾッとする。
そんな訳でハンミッヒは壊れてしまったが、そのハンミッヒの前に使っていた楽器がウチにはまだある。ムラマツのスタンダードである。それこそタンポなんて30年以上取り替えていない。トリルキィのタンポなんて破れてフェルトが飛び出ている。だが!吹いてみるとこれがなかなか良いのだ。
かくして2日目のリハから本番まで、この楽器を使う事にしたのだが、考えてみれば全くひょんな事から、且つて中学時代に使っていたこのスタンダードが奏楽堂デビューする事になってしまった訳で。
ムラマツのスタンダード。
これは当時総銀製なのに23万5千円という安さであった。だが間も無く銀の相場が倍に上がったので、いきなり50万円を超え、そして後にADそしてDSへと移行していった。移行はしていったが、歌口からスケールまでまるで変わってしまった。今やタンポさえ変わってしまい、スタンダードの名残は見る影もない。
スタンダードは大人しくも古き良き時代の響きを持っていて、普通に(正統的に)吹けば普通に美しい音が出る。なのでオーバーホールすればメチャクチャイイ楽器になる事間違いなし、但し現在のスタイルでないタンポを入れればの話だが。
それにしてもハンミッヒは可哀想でならない。スタンダード同様、根本から修理してその上でこれらの銘器をどうしようか、考え中である。