ソロ・アンサンブル

指揮者は必要か?

一昨日、渋谷区にある「白寿ホール」にて、ピアノの発表会の共演という仕事があった。つまり、ピアノ演奏を弦楽五重奏+木管五重奏という最小編成の“オーケストラ”で伴奏する訳で、各出演者にとっては素晴らしい経験になるであろう。

プログラムの殆どは割と“ガチ”な曲が並ぶ。ベートーヴェン・ショパン・シューマン・ラフマニノフなどの協奏曲をこの編成用に編曲、ピアノソロはオリジナルそのままだが、出演者は楽章ごとに交代というシステム。所謂“一般の”人達なのに、皆さんこんな難曲を弾きこなすのだから大したものである。

ステージ上は通常のコンチェルト配置とは逆に、ピアノの前にアンサンブルが並ぶ「室内楽スタイル」となって、1st.Vnが合図を送りながら演奏。伴奏のアンサンブルのメンバーは、この上記のコンチェルトならもう飽きるほど演奏しているベテランが揃っているので、曲中のちょっとしたテンポの変化などは皆大体解っている。なので、指揮者がいなくても各曲全てスムースに進行する……筈だった。

ところがいざリハが始まると、やっぱり所々でソリストとの呼吸がずれることもしばしば。考えてみれば、特に後半のシューマンやラフマニノフでオケと複雑に絡み合う部分では、普段のオケの場合、やはり指揮者を頼りにしている場面がよくあったし。それを自分達だけで何とかタイミングを合わせていかなければならず、その為にはピアノソロの楽譜をかなり細部まで把握しておかねばならないことがわかった。

リハの時間は限られているし、発表会当日はG.Pもなく舞台にて“ぶっつけ本番”だし、いくら慣れている曲とはいえ、綱渡り的な緊張感があった。そして本番。まあアクシデントが無かった訳ではないが、一応伴奏役の責任は果たせたと思う。

終演後、コンミス(1st.Vn)の友達と雑談。彼女も某プロオケの奏者だが、結局こんな話に至った。
「やっぱり指揮者って必要なんだね〜」という…。

この発表会の主宰は高校からの同級生のピアニストで、過去には何度も共演させて頂いた。もうかなり長い付き合いになるが、お弟子の発表会でオケを雇ってこんなに大々的に開催するとは、実に大したものだ。現在は複数の大学にて教鞭をとっておられるが、その音楽観やヴァイタリティーにはつくづく自分も見習わなくてはと思うのである。

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