東山魁夷展〜北欧の風景
(前記事:新国立美術館での東山魁夷展の続き)
1962年(昭和37年)54歳の時に東山氏は北欧4ヵ国の旅に出る。その数ヶ月の滞在期間中の彼の絵もまた、目を見張る程の美しさだ。『東山魁夷&北欧』というコラボレーションは、もう最初っから神様が決めていた、とさえ思える程のベストマッチングだと思う。
その昭和37年(実は自分が生まれた年である)に、スウェーデンにて描かれた「映象」が先ず印象的だ。
この怖い程幻想的な色合いは、夜でも明るい北欧の夏でなければ観る事はできないだろう。自分がこの世に生まれ出る頃、こんなに凄い絵を描いていたのか…と感慨深い思いである。
そして、この絵のタイトルはまさに「白夜」だ。
同じくスウェーデンの風景。これも本当に、本当に美しい絵だ。同じく日本の何処にも、こんな色の風景はないだろう。
そして、一連の北欧シリーズのコーナーで自分が最も感動したのが、この「白夜光」。
ここがフィンランドだという事は、何だか解説を見なくても解るような気がする。まるでシベリウスの音楽が聞こえてきそうな寂しい風景だが、東山氏はきっと彼の音楽は聞いているに違いないと思う。
ところでこの絵の場所は、フィンランドのクオピオという所。昔、クオピオのオーケストラが来日した時に、自分はエキストラでピッコロを吹いた事があるが、オケの人達の大らかな人間性は、やはりこの土地が育んできたものなのだな…と改めて思った。
殆どの彼の作品は、とにかくもの凄く大きい。会場の壁一面に掲げられた作品がいちいちドドーッと目に飛び込んでは、観る人の心を奪って行くのだから、もうたまったものではない。
しかし一方、小さい、というかA3位の普通のサイズの絵画もかなり多く展示されていた。氏が北欧からの帰国後、京都をテーマに書き続けた「京洛四季」シリーズで、自分が目にするのは今回初めてだが、これがまた一枚一枚、観る度に癒される実に素敵な絵であった。
是非多くの方々に鑑賞して頂きたいと思う。