オーケストラ,  作曲家・作品

付罰点音符(?)

フィンランドの苗字には、日本語的感覚では面白いものが中にはある。「〜ネン」で終わる名前が多く、「ニッカネン」「アホネン」「キンナリネン」etc…さしずめ「〜本さん」「〜田さん」という具合かも知れないが、そんな中で現代音楽を代表する「アホ」という作曲家がいる。自分もこの人の作品を演奏した事があるが、それこそこの特徴的な名前とは裏腹に、凄く聞き応えのある曲を書く素晴らしい作曲家だと思う。
カレヴィ・アホ(1949〜フィンランド)彼の無伴奏フルート曲「Solo III」はとても難しかったが、とてもカッコイイ曲だった。そして今週、アホ作曲の「クラリネット協奏曲」の本番を終えたばかりだが、この曲のパート譜にとある音符が点在するのを見つけた。

音符のすぐ右にいちいち「×」が付いているのだ。最初は特殊奏法か何かかな?と思ってさらっているうちに、漸く解明できた。
普通音符のすぐ右に「•」が付いていると、それは付点音符といって元の長さの1.5倍に伸ばす記号。それに対して「×」は元の長さの1.25倍という事なのだ。例えば“付罰点四分音符”なら4分音符+16分音符の長さ、“付罰点二分音符”なら2分音符+8分音符の長さだ。何を言っているのか解らないかも知れないのでこれ以上はやめておく。
とにかく今まで40年以上も音楽に携わっているが、こんな音符には遭遇したのは初めてである。果たしてこれはアホ自身によるオリジナル記号なのか?試しに青嶋広志さんの「究極の楽典」を紐解いてみたが、やっぱり載ってはいなかった。
それにしても自分の知る限り、リハではこの罰点について話題になる事はただの1回も無く、オケは皆もう理解していた感じだ。尤もご覧の通りこんな凄まじいスコアなので、気にする暇すらなかったかも知れないが。とにかくこの変拍子満載の難曲をたった2回のリハで仕上げなくてはならない。こうして無事本番を終えて顧みれば、つくづくカッコイイ曲だったなと思う。アホはやっぱり凄かった(笑)

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