ブラスバンド

感動の復活

ここ2年間、岐阜の子供達によるバンドの春と夏の合宿が立て続けに中止になっていたが、この夏遂に再開の運びとなった。但し今回は宿泊を伴わない「強化練習」という名目であった。

所謂「合宿」は講師も生徒も、そして担当役員の親御さんも皆1箇所に集まって何日か共に過ごすのだが、今回の「強化練習」は岐阜市内にある数ヶ所の公民館等を借り、パート毎に分散して朝から夕方まで講師の指導を受けるという形だ。期間は3日間、例年の合宿と同じである。

子供達はその会場へ家から通い、講師陣はというと“東京組”は岐阜駅前のホテルに3日間宿泊し、毎朝役員さんの車で送迎してもらう。“名古屋組”は各会場まで自家用車で移動する。

とまあ、説明するのは簡単だが、実際はそのスケジュール管理と運用はかなり大変だったと思う。

しかもバッド・タイミングとも言うべきか、7月になってから再びコロナが蔓延してきた。この強化練習を果たして実行すべきかどうかも危うかったらしい。

フルートパートの場合…1日目

岐阜駅から役員さんの送迎で4kmほど離れたコミュニティーセンターに向かう。とても綺麗な施設だ。フルートパートは3人居るが、うち1人は都合により3日目しか参加できず、もう1人は「濃厚接触者」になってしまったので、こちらも全日程参加できず、従って今日教えるのは1人だ。部屋には新人の中学生の女の子1人が待っていた。

午後1時から5時まで、本来は9月の定期演奏会用の曲をパートで1曲ずつ教えて行く筈だったが、蓋を開けてみればこの初心者の子に4時間みっちり付き合う事になる。当然のことながらお互いそんなに保つ訳がない。生徒さんは真面目で上手で、よく吹いていたのだが、やはり気疲れしたのか、途中で気分が悪くなってしまったようだ。なので、こちらも相当休みを入れながら進めて行くが、「休む」といっても何処で何するでもなく、建物の周りの初めてみる風景をボーっと眺めるのみ。第一外は最早危険な暑さで、散歩などはとても無理だ。

そうこうしているうちに時間は過ぎ、生徒さんは自宅へ、そして自分は役員さんの車でホテルへ。夜は他の講師の先生達と食事に出掛けたが、このご時世そんなに長居はできず、早々にホテルに戻る。

2日目

朝9時前にホテルを出発。送迎車には自分だけが乗る訳ではなく、他の講師も一緒に乗り込むが、目的地がそれぞれ違う。1人、また1人と途中で降りて行く。

今日の会場は昨日と同じだが、今度は体育館のようなだだ広い場所。但しここではクラリネットと一緒である。お互い端っこと端っこでレッスンするので、意外と“同部屋”は苦にならなかった。それにフルートは今日も昨日の子1人のみ。こちらも昼食をはさんで6時間に及ぶマンツーマンレッスンは、何となくコツが解ってきて楽々と進めていた。

ミニコンサートも復活

この合宿中の一大イヴェントとも言える「ミニコンサート」は講師と生徒が皆一堂に集まって、パート毎に練習の成果を披露するとても楽しい催しである。今回の強化練習でも、このミニコンサートだけはしっかりメニューに入っていた。

2日目の午後4時に全員が一つのコミュニティーセンターに集合、ここで初めて顔を合わせる講師もいた。このコンサートは極めて自由で、パートによっては先生だけとか、生徒によるアンサンブルとか、講師だけの金管アンサンブルとか、何でもOKである。フルートパートは先ず今回1人だけの生徒とでデュエットをし、それから自分だけのソロを吹いてきた。

このバンドの団長さんは元プロオケ奏者で、その後音大でも教鞭をとっておられたトランペット奏者で、もう喜寿を超えられた方だが、このコンサートでもソロを披露。実はこの演奏が自分の琴線に触れた。まさにその人生を語るようなその音色と演奏に、涙が出そうになる程感動した。改めて、こうして再開できて良かったなと思う瞬間であった。

会場から見た自然豊かな風景

そして最終日

今日のレッスン会場は昨日までとは違い、市の文化センター内にある音楽スタジオ。完全防音の密閉空間だが、やはり時節柄「CO2センサー」なる物があり、適当に換気しなければならない。だが、音出しの環境としては勿論最高である。

この3日目にして初めて先輩メンバーが1人合流した。実は自分はこの生徒に会うのをとても楽しみにしていた。コロナ禍になる前は小学生で、未だ音出しも覚束なかった彼女が、もう中学2年生:パートリーダーになっている。背も見違えるほど伸びていて、何よりフルートも上手くなっている。やはりこのバンドは子供同士、お互い切磋琢磨して上手くなっていくものなのだ。

再開を喜びながらも、とにかくこなすべき課題はこなさねばならず、これまでの2日間とはまた違う、本格的なパート指導が午後まで続いた。

その後、すぐに岐阜駅まで送って頂き、そのまま新幹線で帰京。他の講師・他のパートの子供達・他の役員の方々と顔を合わせることもないのはちょいと寂しいが、コロナ禍ではこれが最も効率的なのだ。

後日、役員の方からお手紙を頂いた。

「(前略)今回の強化練習は初めての取り組みということもあり、不手際も多く、行き届かない点が多々ありましたことお詫び申し上げます。コロナ禍の中、通常の練習もままならず、団員が楽しみにしている合宿も実施できず、この数年は気持ちの下がることも多かったのですが、今回、強化練習で先生に直接指導していただけたことは団員たちにとって大変な励みとなりました。(後略)」

とんでもない、こちらこそ心から感謝したい。この強化練習の蔭では団長さんをはじめ、役員の親御さん達のもの凄い苦労があった筈だ。この各公民館を確保するにあたっての様々な困難・ホテルの手配と講師&生徒のスケジュール管理・送迎の手順…畏らく合宿所1箇所を借り切るよりも何十倍も大変だったと思う。再来月初旬には定期演奏会が再開されるそうだが、きっと大成功となるであろうと信じている。

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