ソロ・アンサンブル

社会経済活動の再開と第7波

これは都内のあるパーティーの様子だが、見た感じではコロナ前に開催された、少なくとも3年以上前の光景と思いきや…

実際はつい先週の出来事である。流石に給仕さんやカメラマン等のスタッフの人達は全員きちんとマスクを着用していたが、お客はこのように食事していない時もノーマスク、席同士もかなり近く、既に“飛沫”などどうでも良いという風である。

例えば形だけでもちょっとしたパーティションを設置するとか、もう少し広い会場にして席同士を離すとか、その類の気遣いはなさそうだ。当然酒類も提供されているから、次第に会場は盛り上がってきてほぼ皆大声での会話。因みにここは都内でも屈指の高級ホテル…のくせに感染防止対策に関してはとても万全とは思えない。

実は自分はこの場でBGM演奏の仕事をしていた。我が師匠の照会によるもので、師匠とのフルート二重奏+ピアノという編成。

この日は開宴の2時間程前に会場入り。41階にある絶景の宴会場だ。師匠はホテル側の進行係の人と、事前に打ち合わせをしていたようだが…いざパーティーが始まるといろいろと不具合な事が生じた。

このパーティーはとある産廃業者の新社長就任8周年記念という名目で(随分と中途半端な数字だな)とは思ったが、曰く「末広がりの“八”」だからだそうで、実際この社長さんという人が何か癖の強い人のようだ。日時だってバリバリの平日の午後だったし。で、例の如く会の初めに何人かが挨拶をし、続いて乾杯の音頭。

この「カンパーイ」という時に演奏を始める事になっていたらしいが、その時自分達は楽器すら組み立てていなかった。慌ててこっちに飛んでくる進行係。せき立てられるようにして演奏を開始したが、時既に遅しである。その時の曲:ケーラーの「花のワルツ」が佳境に入ってきたところで、今度は無理矢理演奏をストップさせられた。どうやらここで今回の主任シェフが「献立自慢」をするので、皆静聴してほしいとの事。

こういった細かい段取りが、要するにちゃんとされていなかった訳だ。省みればさっきの打ち合わせに自分も同席して、内容を把握していれば良かった。

この後はもう食事と歓談のタイムとなり、いよいよ用意してきたプログラムを順に演奏していく。だが今回我々はBGM係なので、当然殆どのお客は聴いていない。自分などはそれ故気楽に吹き流していたのだが、師匠はどうもそういうのには慣れていない風であった。1曲毎に作曲者や曲の内容について、マイクで詳しく解説している。嘗てよくご一緒させていただいた、老人介護施設での慰問演奏と同じ要領で望んでいたのか。。。

そんな風にしてほぼ全てのプログラムを演奏し、残すは“アンコール”1曲のみとなったが、当然誰も聴いていない状況ではアンコールではなく、ただの残りのプログラムである。だがそれよりもこの時点で時間的に会そのものがまだ半分程度しか進んでおらず、その最終曲までその場で40分程待たされたか。さっきの師匠の解説がなかったら、もっと早く終わっちゃっていた事になるが(苦笑)。

それでも今日は雇われの身なので、黙々と仕事をして演奏料を頂いて帰るのみ。因みにその額は当初の約束よりも少なかった。つくづく失礼な人達。。。

現在のコロナ感染状況は第7波真っ只中で、このパーティーの前日に東京都の新規感染者数は初の4万人超え。最早国は何も制限しないから、こんな状況でもこの高級ホテルは依頼されるがままにこのような“三密”パーティーが開催できる。そもそも自分は「パーティー」という言葉に「本当に開催されるのかな?」と最初猜疑的だったし。しかも今現在、猛暑の中でも何とか節電を、と求められているが、このホテルは、というよりこの巨大ビル全体は誰もいなさそうな階の隅々までキンキンに冷えていた。多分相当電力を使っているだろう。うちの近所のスーパーなどは健気にも半分ライトを消しているというのに…。

まさにこの度の社会経済活動の再開とコロナ第7波の到来の縮図を目の当たりにしたような一日であった。

あれから1週間が経った。常に客席とは距離をとっていた自分はどうやら大丈夫であった。

あの時のお客さんの中に新規感染者が出ない事を祈っている。