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オペラシティと「世の終わり」

先週、義弟が病気で逝ってしまった。割と突然の出来事なので、葬儀を終えた今、ふと省みると一体誰のお葬式だったのだろう?と思える位実感がない。
だが、先週は確かに火葬場にて義弟の収骨に立ち会った。自分にとっては告別式での“お花入れ”よりも出棺よりも、何よりもあの荼毘に伏す瞬間が最も悲しい。あんな場面にこれから何回立合わねばならないのかと思うと、心がずしっと重くなる。

それから数日後、とあるコンサートにてメシアンの「世の終わりの為の四重奏曲」を聴いた。フランスの近代作曲家オリヴィエ・メシアンが第二次世界大戦中、ドイツ軍の捕虜となって収容所の中で書き上げた曲である。
それにしても「世の終わり〜」とは凄いネーミングである。余程過酷な状況下で書いたのかと思いきや、実はメシアンは当時既に著名な作曲家で知られていたので、捕虜の中でも比較的優遇されていた。この編成がヴァイオリン・チェロ・クラリネット・ピアノという変わった編成なのは、収容所の中で知り合った他の音楽家の専門楽器による。だからもしそれがクラリネットではなくフルート奏者だったら、自分も既にこの曲を演奏していたかも知れない。

とはいえ、捕虜である以上、明日はどうなるか分からない身であるメシアンが、この曲に託した心情は凄いものが感じられる。曲は「世の終わりを告げる天使の〜」とか「イエスの〜」とか、人間の“生”と“死”・“神”・“天国”等をテーマとした全8曲から成り、メシアン独特の音列とサウンドが耳というより、直截心に入って来るような感覚。最後の断末魔の泣き声と共に魂が昇天していく様は、特に感動的である。
初めて聴いたが、とにかくついこの間までに身内の亡骸を立て続けに目の当たりにしてきた自分にとっては、いちいち心にグサグサと突き刺さるような体験であった。

会場はオペラシティのリサイタルホールだったが、奇しくも義弟の葬儀後の会食会場も同じオペラシティ内のレストランだった。そういえば9月にG大の副学長さんが急逝したという知らせを聞いたのも、ここのオペラパレスでの仕事中だった。今年はどういう訳か、このオペラシティは人間の命についていろいろ考えさせられる場所となってしまった。

オペラシティ上階より北方面の風景