ちょっとした後悔と大きな不安
出演料は出ないが、久々なので興味本位で参加してみた。
そのコンサートは「チャリティー第九」。G大の教員・学生が一丸となって、ベートーヴェンの交響曲第9番を演奏し、その売上金は全額何処かに寄付するという、大イヴェントである。入場料は5,000円もするが、全席売り切れの満員御礼であった。
因みに毎年冬に開催される藝大フィルハーモニアの「台東区第九」は、今年もかなり早い時期に中止になった。まだ先の話なのにもう中止してしまうということは、何か別の理由があると察する。例えば台東区からの予算削減とか、コロナに感けてモチベーションが低下してしまったとか…。
兎にも角にもリハーサルに参加。「教員学生一丸」というが、フタを開けてみれば9割方は学部生。教員やGフィルの楽員は10名程度しか参加していない。特に管打セクションでは、自分以外はものの見事に全て学生だ。学生と一緒に演奏するのは、ある意味貴重な機会である。そんな自分のパートは2nd.フルート。これもこれまで1st.かPiccolo専門で担当してきた自分にとっては殆ど未知の領域だ。多分25年ぶり位だと思う。そもそも7月の酷暑の日に「第九」というのも、自分には初めての経験だったし。
…で実際、学生達の演奏はどうだったか?率直な感想を言えば、上手かった。学生であれだけ演奏できれば素晴らしいと思う。但しこれはプロオケと比べてはいけない。如何にG大生とはいっても、専門的見地からすれば、雲泥の差があるからだ。個人技としてもアンサンブルとしても。
なので、実際は演奏していて不思議なフラストレーションを感じた。周りの演奏はとても「若々しい」が、裏返して言えば「未熟さ」も感じる。音色はいいしピッチも合っているが、肝心の「音楽」が前に出ていない。物理的な縦横の線ばかり気を付けている様は、まるでコンクール直前の高校の吹奏楽部のようである。でもこれは経験浅い学生故仕方のないことで、それを我慢している自分があった訳だ。このシリーズはリハとG.P本番で2日間に渡っていたが、もう1日あったら自分は発狂していたかも知れない。
かくしてその“発狂”寸前に本番は終了した訳だが、会場は拍手喝采の大盛り上がりであった(但しコロナ禍なので“ブラボー”は無し)。この盛り上がりはどうしてだろう?長らく演奏できなかったこの第九の再演への喜びか?単純にこの曲自体の素晴らしさか?それとも演奏が素晴らしかったからか?いろいろであろう。自分はそんな訳で(これで5,000円は幾ら何でも高すぎるだろ?)なんて思う反面、素直にこの雰囲気を満喫していた。
…ちょっと引っかかることがあって隣の学生に訊いてみた。リハ1回とゲネプロにしては曲が良くでき過ぎているので、もしかしたらと訊いてみたら、案の定既に練習は何回かつけているとの事。という事は、自分が乗る時に元々2nd.に座っていた誰かが降ろされていた事になる。誰だか知らないが、その学生さんに悪いことをした。
やはり自分は参加すべきではなかったかも知れない。
そしてもうひとつ。プロとの差はあるものの、一般のお客さんにとってはこれでも十分に満喫できるのだろう。だとしたら大学の対外的なオケ演奏は総て、この学生オケで事足りるのではないか。率直に言えば、Gフィルの存在価値に何となく危機感を感じた次第である。実際、大学がこの学生オケに力を入れている様は目覚ましいものがある。一般のお客さんには…
♪東京藝大シンフォニーオーケストラ
♪東京藝大チェンバーオーケストラ
♪藝大フィルハーモニア管弦楽団
…この中でどれがプロオケなのか、判別できる人は少ないだろう。最初の2つが学生オケだが、これについては嘗ては大学作成のちゃんとしたホームページもできていた。一番下に関しては相当長い間中途半端なホームページが続き、この度漸く別ドメインでリニューアルした体たらく。プロオケだから給料も払わなきゃいけないし…
この演奏会の盛り上がりを第三者的に観察し、我がGフィルはいよいよ具体的な転換期に来ているな〜と痛感した次第である。