見えない敵との戦い

金曜日 , 18, 9月 2020 Leave a comment

「クラシック音楽のコンサートは満席にしても良い」という“お上”からの御達しが出た。それについての是非はともかく、プロオケにとっては取り敢えず嬉しいニュースであろう。

そんな世間の状況を他所にして、ウチのGフィルの場合はとりわけ慎重だ。他のオケがお客さんを入れて既にコンサートを再開している中、G大は協議に協議を重ね、遂にこの度キャンパス内の奏楽堂にて「試演会」を決行。COVID-19を齎す新型ウィルスという見えない敵が蔓延る中、如何にして演奏会を開催していくか、言わば緊急の一大プロジェクトである。

事前連絡

8月某日、先ずはスケジュールとプログラムの連絡が来る。9月の第2週、元々モーニングコンサートが入っていたのだが中止になってしまった日時だ。曲目はウェーバーのピアノ小協奏曲とベートーヴェンの「運命」全楽章。指揮者とソリストはお馴染みの同大学教授陣。こちらもFl.パートの曲ごとの乗り番を決める。
後日、パート譜がPDFファイルで送られて来る(正確には各自ダウンロードする)。普段なら奏楽堂に置いてあって各自が適宜持ち出して行く物だが、これも感染防止の為だ。

リハ開始の数日前から、今度は毎朝検温をし、それを報告しなければならない。これもWeb上のフォームがちゃんとできている(プルダウンメニューにちゃんと今回の出演者名が出てくる)。

そしてリハーサル

検温報告とは別に、奏楽堂入りすると早速スタッフによる検温チェックがある。消毒用アルコールは館内の至る所に設置されている。管楽器奏者は「結露水」処理の為のビニール袋と吸水シートが配られ、そして楽屋へ。楽屋では、というか奏楽堂内ではもう自分の指定席が(早い者勝ちで)決まれば、もう他の席には移動できない。名札を貼るので誰の席かは判るようになっている。当然席同士は離れている。舞台裏施設の頗る狭い奏楽堂だが、ちゃんと人数分はできているようだ。

舞台では奏者同士の距離は1.2〜2mに間隔が開けられ、弦楽器奏者も譜面台は1人1本ずつ。今回降り番の多い自分は、そんな全体を客席側から眺めてみたが(目が悪いせいもあり)殆ど違和感はなく、いつも通りに見えた。因みに今回は客席も着席NGである。消毒業者によれば「1席幾ら」という料金だそうな。

普段は出演者達の寛ぎのスペースも、今回はこんな状態。個人用指定席が壁に向かって設定されている。

今回、自分の出番は「運命」の第4楽章のピッコロのみである。普通ならウェーバーの2nd.Fl.にも乗ったりするのだが、それだと曲毎に席を移動しなければならないので、今回は避けておいた。実際、ホルンセクションには移動があったが、そうなるとスタッフが椅子と譜面台を丸々交換していたので、かなり手間がかかっていたようだ。

ところで前記事にも書いたが、座奏の場合フルートの飛沫はどうやら譜面台を飛び越えることはなく、下方に飛ぶようである。なので自分は今回透明シートを適当な長さに切って譜面台の下辺に取り付け、帰る時に消毒。もしかしたらこれは他の管楽器にも必要かも知れないが、まあ強制はできない。

飛沫防止の透明シートをクリップで止める。指揮者もマスクをし、マイクを使って喋る。

そして本番

指揮者のT先生曰く、マスクの脱着は本番でも自由との事。確かに本番では奏者は喋らないが、今やマスクについては最早本番でもどちらがマナーなのか判らない。なので、自分は第3楽章までは付けていた。因みに指揮者とソリストは本番では外し、弦楽器の人達はまちまちだったか。

そして開演。千席以上ある奏楽堂だが、今回はほんの50人程が来場。しかも正確には「お客様役」のG大の職員等。勿論間隔の開いた指定席。ちゃんとリハがあったから勿論バリバリの真剣な演奏、両曲共盛り上がった。盛り上がったが、50人では大拍手でも寂しいのは仕方ない。「ブラボー」すら言えない状況である。そんな中、学長さんが一人でスタンディング・オベーションしていたのがとても印象的であった。

そして今後は...

この試演会は、今後この状況下でコンサートが安全に開催していけるのかという、大切な催しであった。主催者・スタッフ・楽員・そしてお客様から様々な意見を聞き、協議しながら今後につなげていく。そういう意味では実に有意義な時間であった。スタッフの方々にはとても感謝している。

ただ、だからと言ってすぐにマーラーや第九などがドカンとできる訳ではなく、それについてはとても慎重である。暫くはまだまだ、小編成や無観客配信などの試みが続くであろう。いよいよ「満席OK」とされる中、その点は他の商業オケよりも慎重過ぎるようにも思われるが、「感染者を絶対に出さない!」という確固たる姿勢が表れていると思う。

尤もGフィルの場合、お客さんが少なくて拍手も疎らという状況は何も今に始まった事ではない。指揮科の学生による学内演奏会や卒業演奏会等では既に何十回も経験しているし、20年以上昔に外のホールで定演などやっていた時もそうだった。そもそもGフィルは教育の為のオーケストラであって、チケット収入のみに頼っている訳ではないから、そこは割り切っていかねば。特にこれからは。

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