先ず音色だろ!

日曜日 , 29, 9月 2019 Leave a comment

ここ1年程の間に、2度程知人の為にピッコロを楽器店にて選定する機会があった。選定とはいっても「私はこれを選びました、ハイ買って下さい」と強要する訳ではなく、あくまで最終決定は購入者の意志に任せている。自分はただ購入者の前で試奏するのみである。しかしながら、省みれば結局いつも定番のメーカーのそれに決まっているようである。

近年、ピッコロのメーカーは随分増えた。フルートに比べて、メーカー毎の管体やキィ、歌口付近の形の差が著しい。自分の印象では、得てして新手のメーカーはそのそれぞれが見慣れない“奇妙な”形をしている。その形はともかく、昔に比べて楽器自体はとても鳴らし易くなった。“昔”とは30年位前だが、当時は何処に問題があるのか、メチャクチャ吹き辛いピッコロというのがあちこちに蔓延っていた。

それが今では殆どそういうことはなくなった。特に新進のメーカーはもう、即戦力でビシバシ鳴る。例えば最高音のB♭-H-C辺りは、昔は新品だと全然音が出ないか、出てもかなりショボい音だった。何を隠そう、自分のピッコロもそうだった。

ところで、自分がピッコロを選定する場合は、先ず各楽器をあちこち目で見て観察する。特にマウスピースは穴が開くほど(もう開いているが)凝視する。変な話だが、じっと見つめていると、まるで生き物と心で対話しているような感覚になってくる。それから吹いてみる。

長年の経験で、もう歌口を見ただけでどんな音色か大体判るようになってきたが、とにかく唇を当てて初めて息を吹き込む様は、まさに「初めまして、どうぞよろしく」という対話そのものである。対人関係もそうだが、最初の二言三言の会話で相手の印象が解るのと同じように、ピッコロも最初の5分程で大体解る。言うなれば第一印象から第二〜第三辺りで決まるってところか。それ以上吹くと、もう付き合い方が解ってしまって、どの楽器もよく鳴ってきてしまい、判断が付き辛くなるのは、ピッコロのみならずフルートも同じである。

そこで、とても大切な事だが、この“鳴る”ってのが問題で、初対面の段階からもう上から下までよく鳴り響くのは、人間でいえば所謂「お調子者」で結構要注意なのである。ぶっちゃけて言えば、新進のメーカーのピッコロにはこういう輩が多いのだ。

ピッコロのみならず、およそ楽器たるもの、やはり一番重要なのは「音色」である。そして、その音色は演奏によってその大部分は自分で作っていくもの。しかしながら先程の「お調子者」はこのように良く鳴るものの、肝心の音色が強いて言えば硬過ぎて、自分などは多分1週間も吹いていると嫌気がさしてしまうだろう。逆に如何にも「横笛」というそよ風のような柔らかい響きを持つ音色の楽器は、音量やピッチのコントロールが難しいし、そもそも最初は本当に風の音しかしない。それを根気良く大切に吹き込んでいく事によって、本来の響きを徐々に引き出していく事になる。

そこで一番最初の話に戻るが、そんな風にして最終的に購入者が選んだのは、結局昔からの伝統あるメーカーのピッコロだった。皆口を揃えて「これから吹き込んで良い音を作っていきます」と言っている。

尤も、ピッコロは得てしてフルート程吹く機会も時間も少ないもの。特にアマオケやバンドでは、とり敢えず即戦力として鳴らしていかなければならず、そういう意味では「お調子者」の必要性もあるかも知れない。しかしながら、あんな小さな“木の棒”が何十万円もする高い買い物である以上、もう少しメーカーには音色に気を配って欲しいというのが、今の心情である。

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