オーケストラ,  藝フィルレポート

壊れた楽器-2

今日は指揮科の大学院入試だった。受験生が順番に初見曲と課題曲を振り、我々はその通り演奏するという内容。こういう大事な仕事なのに、度々ウチのオケは穴を空けるメンバーがいる。昨今はよく通勤ダイヤが乱れるので、そんな不可抗力による遅刻者も度々出るし、体調不良による欠席者も時折出たりする。そんな中で最も始末に負えないのは「寝坊」とか「時間の勘違い」とかによる穴あけだ。

Gフィルでは、今日みたいな特別なシリーズになると、必ずインスペクターが確認のメールを一斉に送ってくれる。時間から曲目から服装まで、ありがたくも至れり尽くせりだ。それなのにそれでも来ない。メールをよく読んでいないのか?子供以下だ。何故こういう事が起こるのだろう?

かくいう自分には無かったのか?「無いッ」と断言はできるが、確かに同じパターンのスケジュールが続くと変な“思い込み”なるものが生ずる。一番怖いのが毎週「月水木」というモーニングコンサートの曜日パターンが、時折「火水木」や「月火木」に変わる事。なので実は休みなのに来ちゃった、という経験はある。
管楽器に関しては編成の勘違いもあり得る。「この曲には確かフルートは入っていないので、リハーサルは出なくてもいいだろう」という思い込みだ。どちらも間際に気がついてヒヤリとした経験がある。

オーケストラは、いうなれば世にも奇妙な「楽器」である。今日の受験生は、この楽器を操って合否の評価を受ける訳だが、もしピアノ科の受験生が弦の切れたピアノを弾く破目になるとしたらどうだろう!? 穴の空いたオケは、この壊れた楽器と同じなのである。

この院試については、同じような事が実は過去にもう一件あった。その時は当時穴を空けた団員の処分について、後日教授会で審議されたそうだが、何とかクビは免れたようだ。
Gフィルは通常の開始時間が9時30分。入団当初の約30年前よりも首都近郊の人口が激増し、殺人的でよく麻痺する通勤電車に乗らねばならない現在では、この時間に全員集まるのは確かにキツい。キツいが、やっぱり何としてでも集まらねばならない。
その為には早めの電車に乗り、途中で気分が悪くならないよう体調も整えて…結局全てはより良い演奏をお客様に届ける為の、プロとしての信用問題なのであろう。

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