思い出

敬愛する我が師匠(3)〜かやぶえ

芸大の入試に受かって間もなく、川崎先生に「僕の会があるんだけど入らない?」と誘われ、二つ返事で入会したのが、先生の門下生を中心とした「茅笛の会」というフルートの会だった。「かやぶえ」と読み、先生のお住まいのある茅ヶ崎市から一文字拝借したそうな。

メンバーは蒼々たる顔ぶれが並び、日本を代表するフルーティスト、各音大の教授陣、オーケストラの奏者、楽器店社長etc….皆んな川崎先生にお世話になった方々である。
会の運営はその偉い方々が担当され、年に1回はコンサートがある。所謂発表会的なものだが、ソロありアンサンブルあり、そしてフルートオーケストラも。会場も東京だけでなく、静岡、長野…そして遂にはヨーロッパ・ツアーもあった。ただ、費用は参加者負担なので、流石に海外公演には自分は経済的理由により参加できなかったが。

自分もここでは、いろいろと出演させて頂いた。ソロでオネゲルの「めやぎの踊り」やメシアンの「黒つぐみ」を吹いたり、弦楽器の方とモーツァルトの四重奏曲を吹いたり、フルート・オケをバックにソロを吹いたり、逆にバックのオケでバスやコントラバス・フルートを吹いたり。他の出演者自体が既に大先生や大先輩なので、その方達の前で吹く訳だからもう…メチャクチャ緊張モノである。

1984年の長野公演リハーサル

その中で川崎先生はといえば、フルートオケの為のオリジナル曲やアレンジ作品をどんどん作り、自らタクトを振る。本番後の宴会では大勢の弟子達に囲まれて祝杯を挙げ、幸せそうな笑顔を振りまいていた。

1986年の静岡公演(奥の顔半分が自分)

さて「茅笛の会」はコンサートだけでなく、大々的な合宿もあった。とはいえ中高生のそれとは違って、アルコール付きの愉しいOBOGの交流会だ。長野県北部の山田牧場にてフルートオケ等練習し、それから下(長野市内)に降りて来て本番。そういえば音楽鑑賞教室もあったか。静岡公演も、基本前日会場入りで翌日帰京という泊りがけのスケジュール。そのどれもが実に楽しい思い出だ。

1988年夏・山田牧場「喜峰荘」にて(右端のBassFl.が自分)

だが「茅笛の会」はその後1995年のコンサートを以て解散。川崎先生は女性だけのプロのアンサンブル「ムジカ・フィオーレ」を結成し、こちらを中心に活動を始められた。その「フィオーレ」の後は静岡にて「ムジカKayabue」を結成。この時既に御歳75を超えていらっしゃったと思うが、そのヴァイタリティがとにかく凄い。これもやはり若い時のご苦労の反動故の、ハングリー精神に因るものであろう。自分も見習わなければ。

そして川崎先生が遂に米寿を迎え、その記念コンサートが予定されていたのだが、その直前に東日本大震災が起こり、残念ながらイヴェントは中止となってしまった。3年後の2014年に浜松にて改めて開催され、勿論自分も駆けつけて参加。流石にご老体には一晩立ちっぱなしで棒を振るのはキツかったようで、一部の曲は急遽自分が先生の代わりに棒を振らせて頂く事になった。今思えば、返す返すも光栄極まりない事である。
(次記事へ続く)

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