オーケストラ,  思い出,  藝フィルレポート

2人の対照的な指揮者

今夏、Gフィルにも振りに来たことのある2人の指揮者が相次いで亡くなった。

一人はゲンナジー・ロジェストヴェンスキー氏。2002年春にハイドンのオラトリオ「四季」を振って下さった。印象的なのはリハーサルだ。リハーサルというより、もう毎回GPだ。ただ只管通すのみ。1回も止めない。何も言わない。黙々と降り続ける。曲が終わるとハイさよなら、リハーサル終わりである。
だが、何をしたいのか、オケに要求していることが、その振り方で解る。その厳格な表情にこちらも緊張し、それに応えて演奏するだけで無駄なくリハが進むというものだ。本番も実にいい演奏であった。惜しい方を亡くしたと思う。
もう一人はハンスマルチン・シュナイト氏。この人はG大に客員教授として来ていた。リハの仕方はロジェストヴェンスキー氏とは真逆。最初の一振りで必ず止める。何が気に入らないのか、止めないと気が済まないようだ。ドイツ語で何やら文句を垂れるが、どうやら「もっと小さく」がメインの要求だ。オケの方もそれならばと必ずピアノで演奏してみるが、それでも必ず止める。渋滞とか赤信号だらけとかと同じようなストレスが溜まる。
ニコニコしていると思ったら、いきなりキレるので、仲間内では「瞬間湯沸かし器」と言われていたが、うちの湯沸かしだってこんなに早くは沸かない。
なので、結果どの本番も気持ちよく終わらせることはできなかった。あるコンサートではバリトンのソリストが本番中に歌う場所を見失い、右往左往しているうちにイキナリ「Nein!(ナイン)」と怒鳴り叫び、自分が歌いながら振る始末。まあこの時は、バリトン歌手もアホだったが、判らない振り方をする方も悪いのだ。
そんな訳でオケからの評判は芳しくなく、少なくとも自分は大嫌いで、彼の振るシリーズはなるべく乗るのを避けていた。自分も血の気が多いので、オケに迷惑をかけたくないから。その後Kフィルの常任になり、団からの評判は良かったようだが、とてもそれは信じ難い。ただのツンデレ爺々だったかも知れない。
まあそんな好き嫌いは別として、こうして強い印象を与えた指揮者がこの世を去る度に、一つの時代の変遷みたいなものを感じる。ご冥福を。

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