オーケストラ,  藝フィルレポート

チリって何処?

もう10年以上前の事であるが、藝大フィルに初の海外公演の話が持ち上がった。行き先は何とウズベキスタン。日本のプロオケはちょくちょくヨーロッパやアメリカに演奏旅行に行っているが、こんなマニアックな国には流石に何処も行かないだろう。いったい何処にあるんだ?と当時はいろいろ調べてみた。
「〜スタン」と付く名の国の中でも、この国は比較的安定し、且つ治安も良さそうだ。当時はウクライナの問題もISの問題も無かったし。首都はタシケント。ここの大学のホールでチャイコフスキーの第4交響曲を若杉弘先生の指揮で演奏するところまでは話が進んでいたようだ。
ところが、その後どういう訳か現地担当者との連絡が途絶え、いや途絶えた訳では無かったようだが、全くと言っていい程こちらの事務的な話が通らなかったので、遂にこの話は白紙にすると当時のS研究部長が判断。そんな所、行ったら行ったでいろいろなトラブルに巻き込まれたかも知れず、ちょっとホッとした記憶がある。


そして昨年秋、オケの名称が「藝大フィルハーモニア管弦楽団」となり、日本オーケストラ連盟に加入に向けて頑張っている時期に再度持ち上がった海外公演。行き先は南米のチリだそうで、奏楽堂の楽屋はこの話で持ちきりだ。
「チリって何処だ?」「地球の裏側だよ」「長っぽそい国だ。縦は4,oookm位あるらしいよ」「横は?」「20m位か?」「それじゃホールもはみ出るじゃんww」「チリ、内紛で東西分裂ってジョークもある」「何年か前、炭鉱の落盤事故で鉱夫達が40日ぶりに無事生還した国だ」「イースター島があるよ」「じゃオフの日に皆でちょっと寄ろうか?」「無理!八丈島に行くのとでは遠さの桁が違うよ。サンティアゴから島までの距離は東京からフィリピン位ある」このサンティアゴがチリの首都だって事は、恥ずかしながら今回初めて知った(そもそも旅行ガイドが書店にあまりないのだ)。サンディエゴって都市もあるが、これはアメリカのカリフォルニア州にある違う都市だ。ややこしい。
とにかく今回ばかりは白紙にはならず、本当に行くようだ(笑)藝フィル創立以来初の海外公演地が南米とは、日本のオケとしてもかなり珍しいかも知れない。創立以来初めての〜と簡単には言うが、実は今年は藝大創立120年、何気に日本最古のオケなのである。
さて行程表によると、オケ及びスタッフは出発日によって幾つかのグループに分かれる。大きくは2つに分けられ、その第1陣は一足先にサンティアゴ入りして現地の青少年オーケストラの指導や大統領府での公演がある。その頃第2陣が到着して合流、翌日にサンティアゴ市立劇場にて公演が2回。最後にチリ大学にて1回。プログラムはドヴォルザーク第8交響曲、ベートーヴェン第7交響曲、スメタナ「モルダウ」の他、邦人作品、恐らくチリの作曲家による新曲等、全10曲、、、
と、簡単に書いてあるが、何だかメチャクチャ大変そうだ。更にはチリまでの往復がヤバい。以前チリで地震があって津波が日本に来る、というニュースがあったように、日本との位置関係は太平洋を挟んで反対側なのだが、今回は何とロシア上空を飛びパリ経由、大西洋を渡ってチリへというルート。つまりわざわざの遠回りだ。往きも帰りも。

乗り物好きな男子だが、時差ボケにはめっぽう弱い自分である。果たしてどうなるのか?よっぽど身体を調整して行かねば、と思う。
ただ、楽しみにしている事もある。産まれて初めての南半球は季節が逆で現地は真冬(丁度日本でいう「冬至」の頃だ)。太陽は左から右に移動するし、星座も日本とはまるで違う。水の渦巻きも北半球は右回りで南半球は左回り。そんな色々な観察をしてみたい。また、チリといえばワイン。一日だけワイナリー・ツアーというのが組まれているので有意義に過ごしたいと思う。
…という訳で来月はチリ・レポートが続くと思うが、何かいろいろ緊張する…。

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