レッスン・教室

挫折の乗り越え方?

先月、某フルート専門雑誌から原稿の依頼が来た。テーマは「挫折の乗り越え方」
特にシニア層を対象とした記事らしい。大人になってからフルートを始めた人がぶつかりがちな壁について、傾向と対策をという訳である。
実際、自分の生徒さんもシニアの方が多く、それなりの悩みもレッスンしているといろいろ解ってきた。
この雑誌、多分昨日位に発売されたと思うが、折角なのでここでも2回に分けて紹介しておこう。どうせ紙面の都合で何箇所かカットされるので、ここではノーカット版で(但し文体は変えてある)。
 


音質について
音の「響き」や「美しさ」もさる事ながら、レッスンしていて特に気になるのは「揺れ」である。その振幅が大きいあまり、音がブチブチ切れて聞こえるような吹き方では、「一体これはヴィブラートなのか?ただ震えちゃっているのか?」なんて疑わざるを得ない。
全音符や二分音符、つまり「白い音符」を「白く」吹く事を、もう一度認識してみる必要がある。
そして、ヴィブラートの理想は、揺れの「深さ」と「速さ」を自在にコントロールできる事。練習方法としては、任意の音を先ずは完全なノン・ヴィブラートのロングトーンから始め、次第に揺れを深くしたり浅くしたり、速くしたり遅くしたりしてみる。身体の中に「ふかさ」ツマミと「はやさ」つまみを想定して、それを交互に動かしてみるイメージで。
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応用編として、M.モイーズ著「ソノリテについて」の中の「演奏解釈における音の統制」の章をやってみると良い。ちょっと忍耐力の要る練習なのだが、次第に音は安定してくると思う。
運指について
指が思うように動かせない生徒さんの多くは、結構手が強張(こわば)っているようである。具体的には、押さえていない指がかなり高く上がっている、指によっては第1〜2関節が伸びて突っ張っている、等。
フルートは横に構える楽器故、曲を吹いている時などは自分の指については殆ど認識外となってしまう。例えばロングトーンの練習時とか、比較的運指に余裕がある状況で、努めて指の状態を意識し、脱力を心掛けてほしい。
その時に特にカヴァード・キィの楽器の人は、敢えて指先をそのキィに軽く乗せてみるのも良い。最初はとても違和感があるかと思うが、じきに慣れてくるであろう。
また手の強張りとは別に、運指には「単独の指が早く動かせない」「他の指との連携が上手くいかない」という、2つの大きな問題がある。考えてみれば、特に利き腕ではない方の指先なんて、楽器を始めるまでは物を「掴む」とか「押える」とかしかしていなかった訳故、単独に動かすのは至難の業であろう。
これらの問題を克服するには、それぞれ「トレモロ」「反復」の練習をお薦めする。
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先ずはとてもゆっくりから、丁寧に、そして少しずつ速くして行き、途中でもう一回テンポを落として、ジグザグ式にテンポを変えてみる等、工夫してみると良い。
リズムとテンポについて
付点のリズムが甘くなってしまう傾向がよく見受けられる。付点8分と16分音符の比率は3:1だが、それを敢えて4:1位までに鋭くしてみたり、アーティキュレーションを変えてみたり等、工夫してみるとよい。
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また、例えば小節間に渡るタイについても、規定の長さよりも短くなってしまう人もかなり多い。タイの間に自分が何拍伸ばしているのか判らなくなってしまい(この辺で良いだろう)と次の音を吹いてみたら、意外と早過ぎたという事だ。(レッスンの後でどんなに急ぐ用事があっても)必ず小節をまたいだ後の1拍目はしっかり数えるようにしてほしい。
(続編に続く)

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