地域で育てる吹奏楽
例えば吹奏楽部にて、初心者の新入部員に先輩が吹き方とかを教える場合、もし何か間違った奏法を教えてしまったとしたら…
多分それは、その後「伝言ゲーム」よろしくずっとずっと伝わっていく事であろう。10年も20年も。恐ろしい事だ。だが、その伝承の途中でプロの演奏家が入って来てちょくちょく修正を加えていくとしたら、それは何とか防げる。
楽器毎に専門のトレーナーがいるとか、部員が個人的にレッスンを受けているという話はこの際別として、何かそういう機会があるべきだと思う。
「神様の集まる所」と言われる島根県。出雲市。ここで3年毎に招ばれて行っている出雲管楽器ゼミナール。年毎に木管金管1種ずつプロ奏者を招いて、丸一日かけて行われる講習会であり、早くも再びフルートの順番が回って来た。
この3年というのがポイントで、中学にしても高校にしても丁度3年で部員が入れ替わる。誰しも在籍しているうちに1ぺんはこの講習会を体験できるという訳だ。
講習は朝9時から夕方5時まで。午前中は基礎奏法についての説明と実践、午後は各学校の代表者が前に出て来て公開レッスン。各学校の都合もあるだろうから、大体こんなメニューの一日。
察するに、大部分の生徒にとって最も悩む点はやはり「音」だろう。音が汚い、息が続かない、音程が悪いetc…実際訊いてみたら皆「Yes」という答えだった。それらを克服する為に、いや回避する為に、もしかしたら間違った吹き方をしている子も居るかも知れないと、最初から自分はタカをくくっていたのだが…
いやいや、なかなか、どうして、皆上手だった。少なくとも唇に無駄な力を加えて「びぃいいん」なんて音を出している子は居ない。良い意味で拍子抜けだが、それでも呼吸法・口の形とマウスピースの関係・息の速さと強弱やピッチの関係・その他諸々について再確認、皆熱心に聞いてくれた。
各学校代表者のレッスンでも、フルートにせよピッコロにせよ皆いい音で、よく鳴っていてびっくりした。思うに、3年前に教えた事がちゃんと後輩に伝わっているのだろう。尤も、指使いについては1点だけ、誰もがよくやりそうな間違った押さえ方をしていた子が数人居たので、今回はそれについて力説させてもらった。
出雲では先生達が協力し合って、地域ぐるみで吹部を育てている様子である。どうしてもフルートの子達しかみる機会がないのだが、つくづく各学校毎のバンド全体の音を聴いてみたいものだ。きっといい音をしているだろうと思う。
さて、自分にとっては5回目のこの仕事だったが、今回は帰りがヤバかった。暖冬もどこ吹く風、今冬最大の寒波が襲って来たため、雪に阻まれて飛行機が飛ぶかどうか…講習が始まる前からそんなことばかり気にしていたが(苦笑)…大丈夫だった。ちょっと遅れながらも何とかその日のうちに帰宅できた。
翌日(24日)の西日本はニュースで知られている通りの大雪。間一髪セーフといったところか。
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