壊れた楽器
昨年末から今年初めにかけて「記録的な暖冬」という言葉が飛び交った。寒いのが大嫌いな自分にはホッとする限りだったが、ここ数週はそんな言葉は跡形も無く消えた。
本格的な寒さのきっかけは、今週初めに首都圏を襲った大雪だった。まさに世の中の仕事モードが開始となる月曜日の朝、自分もオケの練習に向かっていた。
未明に大雪になるという情報は昨晩から入っていた。いつもなら大袈裟な割にはよく外す天気予報も、今回ばかりは自分もヤな予感がしたので、早めに寝て早めに起きた。そして外を見てギョッとして、早速出かけて行った。
電車内は激混みで、降りる人の為に一旦降りてあげると、自分が乗れなくなりそうになる始末。そんなこんなで所要時間がいつもの倍位かかってしまったが、それでもそれ以上早く出ていたから、結局いつもより10分程早く到着。
周りを見てみると、やはり閑散としている。開始10分前位になっても、まだ半分も集まっていない。遂にインスペクターの人が開始を30分遅らせると宣言。
さてこの日は、指揮科の学生の演習というメニュー。当初の開始時刻になった。指揮者(学生)は来ていた。指揮科の先生もスタッフも全員来ていた。オケのメンバーといえば、マイカー出勤族は大体来ていた。でも電車組が約半分程来ていなかった。皆そもそも電車に乗れなかったという事は、後にニュースで報道されていた通りである。
ウチは(音楽教室用の特編オケとかは除いて)一日のうちで多分日本で一番早く始まるオケである。今日みたいな非常事態の中を遅刻しないで着くようにするには、もしかしたら始発に乗ったり前泊したりしなければならない人もいるだろう。
それでも始発に乗ったり前泊したりすれば、首都圏なんだから何とか間に合う筈だ。それをしないのは多分「明日は学生の演習だから」という心の甘えがあったかなかったか…最善の努力をしたのに、どうしても、どうしても時間までの到着が叶わなかった団員ばかりである事を信じたい。
とにかく、数名ならともかく、半分も来れないというのは尋常じゃない。30分経ってもまだ5〜6人位は来ていない。弦楽器ならまだしも、管楽器がこれだともう曲にならない。
指揮科の学生はまだ棒振りとしては未熟。一所懸命楽曲を研究して指揮台に立ち、先生達にあれこれ指摘されながらも上手くなろうと努力する。でもこっちがオーケストラという「楽器」として揃っていないと、壊れた楽器をさらっているようなもの。何だか気の毒であった。
これがもし本番だったら、或いはもし外の仕事だったらもうちょっと沢山集まっていただろう。本来、こういう差はあってはならないのだ。
こんな偉そうな事をいう自分だって明日は我が身、なので今日の記事は自身への戒めの意味で書いている。
とかく首都圏は雪に弱い。でも雪にも強いオケというのが、個人的な理想である。