困った新人
ふと気がつけば、この数年の間にオケのスタッフがガラッと変わった。インスペクター・ステージマネージャー・ライヴラリアンetc.これも4年前のオケ連加入による運営体制の変化故であろう。
スタッフの仕事はどれもとても大変そうだが、中でも楽員とのコミュニケーションが最も頻繁なインスペクターが、群を抜いて激務と思われる。
このインスペクター(以降略してインペク)は昨年度まで約18年間に渡って勤めていた人が病気を理由に退職し、その後いろいろな過程を経て、今年度新しくH.Yという新人が務めることになった。
H.Yは絵に描いたような真面目で几帳面な人物である。他の一般大学からG大の大学院にチューバ専攻として入学し、嘗てはエキストラで大分手伝ってくれたものだ。
しかしながら、その真面目と几帳面が仕事にそのまま反映するかといえば、そう言う訳では無い。人間だから間違いもある。ただ、そのミスがどういう訳か、それ故この自分に火の粉として降りかかった来た事が、この数ヶ月に3回もあった。
「仏の顔も三度まで」と言う訳で、今度トラブルがあったら流石に黙って見過ごす訳にはいかないだろうと思うのだが…。
オーディションに際して
…まあ、これは彼のせいではなく、事務局全体の信じられないミスなのだが、同僚フルート奏者の定年退職に伴う後任の入団オーディションに際して、自分の知らないうちにその日時と課題曲を設定されていた件。
もうこれに関しては、長年このオケで仕事をしてきた自分にとっては、この上ない屈辱的な事件なのだが、とにかくいろいろなすったもんだの後、一応正式にオーディションは行われ、後任も決まった(但しこれから施用期間がある)。H.Yはその際かなり自分といろいろコミュニケイトしてくれたのは有難いが、とにかく後味はあまり良いものではない。
オペラ公演の出番に際して
来たるオペラ公演のスケジュールは9月末にリハーサルがあるが、その後のG.Pと本番は10月上旬にまたがっている。9月を以て退任される前任者は、従ってこれには乗れないので、自分と後任者・若しくは自分とエキストラという乗り番計画をしっかり立てていた。
その際、一つネックになるのが前任者の9月のリハ分の給料である。前任者はそれを後任者orエキストラに回してくれとメールして来た。その素晴らしい心配りに、感動すらした位である。自分としてはこれはいわゆる「降り番」扱いで、9月分は所謂退職のお餞別よろしくそのまま支給されても良いのではと思っていた。
ところが!超真面目なH.Yはそれを運営会議にかけてしまった。事は大事になり、ややもすれば前任者がそのままオペラまで乗り番になるかも知れないとまで発展して来た。
自分はこのように、パート内でお互い納得できるようにやりくりしている円滑な乗り番計画に水を刺されるのが大嫌いである。もしこれで、前任者の延長登板ということになったら、フルートパートは運営陣・そしてインペクに対して相当な不信感を抱くだろうと思っていたのだが…
結局、話は元の鞘に収まった。オペラは自分と大学院生とで乗ることになった。しかし今回事務局は、後任者にもオペラのスケジュールを押さえさせたようで、その点は気の毒だった。前任者の9月分の給与については、どうなったか知らない。
H.Yの真面目さ故に、思い切り3人のフルート奏者がかき回された感じである。ちなみに自分が入団した頃のインペク氏は、その辺はかなり柔軟に対応してくれた。インペクというのはある程度柔らかい頭が必要だと言うことを、彼はまだ学習していない。
インペクに関しては、自分が入団した頃のT.Yさんが一番良かった。2000年位に退職されたが、車のハンドルのように、ちょっとした“遊び”があり、それでいてとても信頼できた。当時は月々のスケジュール表もT.Yさんの綺麗な手書きだったが、記憶しているところでは記載ミスというのは確か1度もなかったと思う。ホンワカとやっていつつも、要所要所はキチンと仕事していた人だ。今のH.Yとは真逆の人だ。少しは見習って欲しいものである。
7月モーニングの出番表に際して
7月最終週に予定されているモーニングコンサートは、首席のOさんと大学院生で出演することとし、ホール舞台裏の「出番表」にはそのように自分は鉛筆で書き込んでいた。
H.Yはそれを敢えてパソコンで清書して決定版として貼り直しているのだが、それを今度は「自分と大学院生」と打ち間違えてしまった。
一見他愛もない事のように思えるが、実はこれはややもすれば大変な事態を招きかねなかった。つまり、自分はもう降り番のつもりでいるし、Oさんもその清書を見て「私降り番なんだ」と休むつもりでいた訳で、もしあの時一言Oさんが確認してくれなかったら、リハ初日の1st.flは空席になっていたかも知れない。
もしかしたら最初に自分が出番表に書き間違ったのか?だとしたら自分が責任取ってやっぱり出るべきなのかと、一時凄く悩んだが、結局そんな無理をしなくても良くなり、これも一件落着。やれやれである。
本当にやれやれである。幾ら新人でも、この3連発は流石にイライラしてきた。冗談抜きで、今度やられたらキレるかも知れない。
思うに彼は仕事が多過ぎ…いや、そもそもオケのインスペクターには不向きなのかも知れない。事務局には他にもスタッフがいるが、皆忙しそうだ。思うにもう少しスタッフを増やしたり、アルバイトを雇ったりして仕事を分業すべきなのでは。そしてH.Yは他の仕事をすべきなのでは。
フルートパートは取り敢えず困難を逃れて来たが、そのうち他のパートで、又は全体で何か大チョンボをやらかすかも知れない。南米公演がまたあるが、何となく嫌な予感がする。なるべく旅券とか航空券とかの仕事はさせて欲しくないものである。