オーケストラ, 藝フィルレポート 偉大なオーボエ奏者 2020年3月3日 / 今年度Gフィルのモーニングコンサート最終公演は、トマジ作曲のトランペット協奏曲とブラームスのヴァイオリン協奏曲というプログラム。後者にて自分は1st.を担当していたのだが、自分の右隣、つまりオーボエの1st.はいつもの団員ではなく、特別にO教授が座っていた。実はO先生、この3月を以て長年勤められたG大を退官されるので、いうなればその記念公演でもあった。ブラームスのVn.協となれば、知る人ぞ知る第2楽章冒頭のオーボエのソロである。その昔、フィラデルフィア管弦楽団首席Ob.奏者マルセル・タビトー氏のソロがあまりに美しかったので、その後のVn.ソリストがうっかり引き忘れたという逸話がある程だ。そして今回のO先生のソロも実に素晴らしく、“特等席”で聴いていた自分は一緒に共演できた幸せを心から噛み締めながら吹いていた。実はO先生が新日本フィルの首席奏者だった頃、自分もこのオケのエキストラで何度かご一緒させていただいた経験がある。もう35年も前の話だ。当時若造の自分にとって、このオケはいわば「針の筵」だった。そんな中でO先生の演奏を聴き、なる程オケの首席奏者はこうあるべきなのだと、漠然と感じた記憶がある。その時はあの怖い雰囲気にも関わらず優しい感じの方だなと思っていたが、それから10年程が経って別の仕事でご一緒させて頂いた時に、先生のおっしゃる話を聴いて「うわやっぱり厳しい方だな」なんて思ったものだ。曰く、「オケのエキストラって大抵無難な下吹きで来るじゃない。でも例えば『第九』なんか、その下吹きの音から始まって、2nd.フルートが妙なピッチで吹かれると『アレ!?誰が吹いてんの?』なんて思わず横見ちゃうんだよね。ついさっきまでチューニングで同じ音出してたくせにサ」とか、「コンクールの審査員ってさ、例えば課題曲がモーツァルトのコンチェルトの場合なんか、やっぱりその曲をちゃんとソリストとして吹いた経験がないと審査できないよね。オケの前で吹いた事ない奴に一体何がわかるの?っていう」これらのご発言、今となっては至極もっともだと思う。演奏する仕事だけでなく、例えばG大の入試の審査官として初めて仕事した時も、いろいろそのノウハウを教わった(フルート科の審査でもO先生は同席されていた)それこそ先生の隣りの席で先の談話を思い出し、(アレ俺ってこの課題曲本番で吹いた事あったっけ?)といちいち心の中で確認したものだ。楽器は違うし勿論レッスンを受けた事もないが、本当に沢山の事を勉強させて頂いた。それだけにもうG大を去るなんて、実に残念である。先日のこのブラームスの本番にて、この美しい第2楽章終了後、アタッカ(=間髪入れず)で第3楽章に突入するが、自分はやや暫くの間感動のあまりアムブシュアが定まらなかった。 自分の向こう側がO先生 またいつの日か是非ご一緒にお仕事したいと願っている。お元気で、ご活躍を。