オーケストラ,  藝フィルレポート

福江島

 Gフィル秋の地方公演、第2弾は長崎県五島市だった。恥ずかしながら五島市と言われても、長崎県の何処にあるかは知らず、地図で調べたら何と離島である事がこの度解った次第である。

家から空港まで1時間半、羽田から長崎まで2時間、空港から港までバスで1時間、そして高速船に乗ってまた更に2時間!何だかんだで約9時間の長旅だが、チリ往復を経験しているGフィルにとっては、これでも序の口とされているのか。

今回の公演は「隠れキリシタン関連の施設が世界文化遺産に登録された記念」という名目だそうだ。五島列島にはそれに因んだ建造物が数多く残っている。残っているが、かといってそれらの一つでも訪れる為の時間的余裕は皆無であった。

ただその代わり、その土地には独特の風景・そして味がある。こういう所に行くとガクタイはすぐ後者(食&呑)だけに目が行き、飲み明かしてしまうようだが、自分はそういう訳で最初から前者、とりわけ温泉を狙っていた。

会場は福江文化会館で、ベートーヴェンの「運命」・モーツァルトのホルン協奏曲・そして地元の合唱団とのオリジナル曲等。マチネ公演なので夕方には終了。早速近所(とはいっても5km程山の上だが)にある「鬼岳温泉」へ。

思惑通りだった。沈みゆく夕日を眺めながらの露天風呂は、この世のものとは思えない絶景。お湯も気持ちよく、その後のグルメも堪能。この夜は満月だったので、極め付けは山の上から眺める煌めく海。埼玉人には貴重な光景なのである。


11の有人島と52の無人島から成る五島市のうち、Gフィルが訪れたのは一番大きい福江島である。中心街には上級武士の屋敷が作られ、周辺部には中・下級武士の屋敷、更には商人町や職人町が作られた。それらのうち、最も保存状態の良い武家屋敷通りがこのように現存している。

約400m続く石垣は、溶岩塊の石垣を積み上げ、その上に「こぼれ石」といわれる丸石を積み重ね、両端を蒲鉾型の石で止めるという、全国的に見ても類例を見ない造りとなっている。殆どの門が「薬医門」という門構えになっている。

福江港の付近には「常灯鼻」(じょうとうばな)と呼ばれる防波堤兼灯台がある。当時の藩主:五島盛成が島や船の安全の為に築かせたものだそうで、その造り方が良いのか、170年以上経った現在でも、このようにこのように立派な姿を保っている。

「世界遺産」の対象以外にも、このように歴史的情緒を彷彿とさせる場所が、この島には豊富にある。おそらくこの島にもう訪れる事はないと思うが、良き思い出としてここに記しておきたい。