オーケストラ,  藝フィルレポート

話術

毎年この3月、Gフィルは台東区の音楽鑑賞教室の仕事がある。区内の小中学生を奏楽堂に招いて1時間程のコンサートを3回。音楽の教科書に乗っている名曲をはじめ、楽しいプログラムが並ぶ。また最近は藝大の「ジュニアアカデミー」の受講生のうち優秀な子供をソリストに招いてコンチェルトを演奏している。子供とはいえ、目を閉じて聴いていると大人が弾いているみたいに上手なので、毎回本当に驚いている。
小学校を対象とした本番では、オケ伴で全員で歌を歌う場面もある。「気球に乗ってどこまでも」とか「ビリーヴ」とか。中学生を対象とした本番では、指揮者体験コーナーというのもあった。そして楽器紹介。各楽器毎に何か1節演奏し、なかなか内輪でも盛り上がる場面。
と、ここまでは他の音楽鑑賞教室とあまり変わらないが、この奏楽堂には立派なパイプオルガンが備えてあるので、このパイプオルガンのソロ演奏というのが挟まる。Gフィル音教ならではの特徴的なコーナーであろう。
さて、こういうときにコンサートを如何にスムース且つ面白楽しく進められるかというのが司会進行の腕の見せ所だが、当鑑賞教室では指揮者がこれを兼務している。つまり曲間で指揮棒をマイクに持ち替えてMC…ってことになると、音教の指揮者はある程度話術にも長けていなければならない。これまでにこれを務めたのは4人。初代からのこのMCを思い出してみると…
初代(鈴木織衛氏)
とても流暢にお話しされるが、少々喋り方が早過ぎるかも。言葉の最後に必ずといっていい程「〜という風に思います」が付く。ある時ヴァイオリンの弓のことを「馬の毛の尻尾でできている」と解説していたが、正しくは「馬の尻尾の毛」だ。やはり棒を振りながらだと、多少は脳内もテンパっているようである。
二代目(青嶋広志氏)
本業は指揮ではなく作曲家。従って振りっぷりもそれなりだが、とにかくこの方はお話が面白い。面白過ぎる。子供達は大喜びだしバックのオケも大爆笑。しかしある年、確かにコンサートは楽しく聴くものとはいえ「『あの楽器何?』『あの人カッコイイ』『綺麗な曲だね』って隣の人とお話しながら聴いてていいんですよ。さっき音楽の先生が『静かに黙って聴きましょう』なんて言ってたけど、あれは間違いです!」なんてその先生の前でおおっぴらに述べていて、次の年からは来なくなった。あれが原因かどうか知らないが、とにかく残念。
三代目(田中裕子女史)
藝大指揮科出身の若い女性。お話も端正でとても解り易く、才女という印象。それだけ。
そして昨日は新しい指揮者横山奏氏が。それこそ数年前まで学生だった若手で、トークはまだまだ緊張していた感じだ。四代目となるかどうかは判らない。

ヴァイオリンのソリスト(藝大Jr.アカデミーの中学1年生)にインタビューする横山氏。
まあ考えてみれば、無理に指揮者がMCを兼ねる必要もなく、苦手な場合はプロの司会者を立ててもとは思うが、まあ予算にも限りがあるのだろう。バックのオケだって、フルートなど本来3人必要なのに2管で抑えられている位だし。

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