書く講評と話す講評
今月初めの恒例、「さいたま市ジュニアソロコンテスト」の審査では参加者一人一人に各審査員からの講評用紙が渡される事になっていて〜これはどの大会でもあると思うが〜今回2日間で枚分を次から次へと書く作業は、このテの審査員経験者なら誰もがキツいと思っているだろう。書きたい事が沢山ある演奏などは、書き終わらないうちに次の演奏が始まったり終わってしまったりする。だから結局要点だけになったり、殆ど書き殴りになったり、終いには手が痛くなったり。
例えばだが、こんな講評『とても情緒豊かに演奏していましたね。音も高音から低音まで伸びやかに出ていたと思います。ただ、ブレスの直前の音の処理がちょっと雑だったかな?テンポの速い部分では16分音符の動きが転ばないように丁寧に吹きましょう』という文面だったとする。
計測してみた。これを書き終えるまで、もの凄いスピードで書き殴って1分50秒。考えながら書くと多分2分半から3分かかる。参加者の持ち時間は4分。つまり半分程聴いて、その時点でもう書き始めないと、その後どんどん遅れをとってしまうという完全流れ作業。勿論その中で点数も付けなければならない。
そんな時間的制約+自分の文才の乏しさ故、本当に自分のアドヴァイスは演奏者に伝わっているのかどうか?と不安と反省の入り混じった気持ちが続いていたところで、今度は講評を書かずに話すだけ、という珍しいお仕事を頂いた。
先週の土曜日に開催された「プロのアドヴァイスがもらえる発表会」。こちらは審査ではなく、聴いたそばから客席でマイクを持って演奏者に直接伝えるというシステムである。アドヴァイザーは自分の他にはピアニストとヴァイオリニスト。なので、参加者もピアノ、ヴァイオリン、そしてフルートと多様である。
今回参加者は7名、各演奏に対して3人のアドヴァイザーが専門・専門外を問わず講評を喋る。アドヴァイスの持ち時間は一応一人2〜3分程だが、それでも喋るだけだから先程と同じ2〜3分でも沢山の事を伝える事ができた。
これはこれまでにない、実に素晴らしい企画だなと思った。例えばフルートの演奏に対して、自分は専門的な事が言えるが、ヴァイオリンの先生からは弦楽器の視点から、ピアノの先生からはピアノの視点からアドヴァイスがされる。そうすると自分でさえ「あ〜そうかぁ」と“目から鱗”的な発見がある。演奏者にとっては尚更であろう。今後楽器を練習するモチベーションも更に上がるというものである。
参加者も聴講者もちょっと少なかったのは残念かも知れないが、まあ第1回企画としてはなかなかのものであり、今後この企画が発展して沢山の人達が集まってくることを願ってやまない。
記念のクッキー
この企画、会場は横浜市栄区にあるとても綺麗な市のホールで開催された。そう、埼玉からは遠いのである。地元の方が個人で企画し、鎌倉市の文化協会の後援で実現した。一方こちらのジュニアソロコンは参加者500人超えの大盛況なので、講評を直接喋るなんてまず実現不可能だが、さいたま市でもこんな企画があればいいのに、とつくづく思うのである。文化意識向上の為に市の文化振興事業団の方、如何ですか?