鈍感だった自分
「芸大フィルとの35年」シリーズでほぼ全てのことを暴露し、もうこのオケに関する記事は書かないことにしていた。しかしその後、人伝にとんでもないショッキングな話を聞き、これは絶対記事にしておかなければと思った次第である。
Gフィルを去ってはや9ヶ月。最早このオケの活動など全く気にも留めず、開放感に浸っている自分であるが、例えば勤務日だった日の朝8時半頃、自分はあの地獄の様な通勤電車に乗っていただろうなとか、10時位には腹痛と闘いながら、つまらない現代曲を吹いていただろうなとか、時々想像する事もある。
とにかくこうしてあのオケから“足を洗った”今、顧みればオケマンとして人間らしい生活ができていたかどうかすら疑っている自分であるが、それでも唯一の心の救いだったのは、残り10年程で飛躍的にレヴェルアップしたセクションと、その和気藹々とした雰囲気であった…筈だった。
ところが!或る日ある人物から相談を受けたことにより、それさえも、それすらも無惨にも覆る事実が、今になって判明した。
陰湿極まりない虐め
もう20年近く前からだ。ある1人の楽員がある陰湿なイジメの被害を被っていたのだ。恐らく「いた」ではなく、現在進行形であろう。被害者はXとしておこう。Xは特に性格等に問題はなく、それどころかとてもいい人だ。楽器の技術もピカイチで、まさにプロのオケマンである。それなのに、何故…?
“いじめ”の手口は、例えば朝に顔を合わせると、プイッと無視されたり、逆に睨みつけたり、露骨に避けたり。。。全身で「オマエなんか嫌いだよ」アピールをしてくる。それ以上の攻撃は無いにしても、これを20年近くくらってきた身にもなってみると…居た堪れない。勿論こういう話は、先ずはXの思い過ごしだろうとか、被害妄想かも知れないとか最初は思うであろう。ところがどうも全くそうではなかった。酷いのは、昨日まで親しく話をしていた人が突然そうなるという話。という事はXに関して良からぬ噂を広めている楽員が居るという事だ。そしてどうやらそれは特定できた。1人だけではないというのが厄介である。諸悪の根源は数名いるらしい。
Xは確かに一緒に話していても、ちょっと強気で一途な部分も感じる。だがそんなのは1つ位は誰しも備わっている、全く支障のない性格で、寧ろ音楽家には必要とすら感じる。X本人は家庭の事情、とは言ってもこれも誰しも経験するであろう困難な状況にありながらも必死で頑張って来たのだ。そんな苦労も知らずに、こんな惨い仕打ちをするとは、よくそれでお客さんに夢を与える仕事がシャアシャアとやっていられるものだ。
では今までに一体誰がそんな態度をとってきたのか?ここでX本人に訊いてみると、信じられない名前が次々と出てきた!一端のオケマンとして、自分も普段から親しく付き合ってきた人ばかりだ。楽員だけではない。事務局スタッフの名前も数名入っていた。そして指揮者すらも!
そしてこんなに酷い事実に全く気づかなかった。本当に知らなかったのだが、Xはそのうちこの自分に対してすら「本当は知っていたに違いないけど、私に気遣って知らないふりをしている」と心外な事を言うようになってきた。自分はそんなXに対して、最早反論しても無駄かなと思った。それ程までにXの心は荒んでしまったのだ。不憫でならない。もし本当に在職中に知っていたら、例えば運営委員長に相談したり、人知れず決定的な証拠を掴む等、何か手を打ったかも知れない。
今できる事といえば、こうしてこの事実をこの記事を通して世に知らしめることしかない。
Gフィルは日本一稼働時間の少ないオケであり、大抵は午前中で終わってしまう。時間が来ればチューニングがあり、すかさずリハが続き、終わったら解散。楽員同士が談笑できる機会といえば、15分休憩とかたまにある昼休みとか、そしてG.Pと本番の間とか、要するにあまりない。その間、例えば自分は何をしていたかというと、殆ど独りで好きな事をしていた。練習したり、iOS系で動画を見たり作編曲したり。食事もエキストラの子と行く事はあるが、基本は「ボッチ飯」を貫いていた。
本当は他の楽員と好きな映画とか、趣味の日曜大工や筋トレや菓子作りの話とかもしてみたかったのだが、そんな面白い輩はものの見事に誰一人として居ないから、話が合わないのだ。だからこの陰湿な虐めに気付かなかったとも言える。つくづく自分は鈍感だったな〜と改めて思うが、とはいえ結局はこの“完全マイペース”が功を奏した訳だ。変な人間関係に巻き込まれずに済んだ、ということか。
それにしても、他のプロオケでも昔から本当にこの手の「虐め」「嫌がらせ」「パワハラ」「セクハラ」等の話をよく聞く。ステージ上で繰り広げられる名曲と名演の夢のような世界を、何も知らないで堪能しているお客様の立場がつくづく羨ましい。少なくとも自分はあの職場に居たせいで、今はGフィルどころかオーケストラそのものが大っ嫌いになってしまった。最近はオケがテレビに映ったり聞こえたりするだけで、この上ない嫌悪感を感じてスイッチを切ってしまう。この“症状”が回復する日は来るのであろうか…