レッスン・教室

三角関係

所謂大手の音楽教室というものは生徒と先生の間に先ず「窓口」というものが存在する。入退会の申し込みや時間についての諸連絡などはこの窓口(=受付)に対して行ない、その担当者がそれを先生に伝える。例えば「電車が止まっちゃったのでちょっと遅れます」とか「体調が悪いので今日はお休みいたします」とか。
だが生徒さんからの「来週は旅行に行くのでお休みいたします」「仕事の都合でできれば時間を変えて頂きたい」といった要望や、逆に先生側の都合によるレッスンの変更などは、窓口を通さず直接やりとりし、その結果を受付に伝えておく。
…なんて事はまあ、よくあることだ。別に何も拘る事はない。


*****[窓口]*****
Ⓐ/      \Ⓑ
[先生] – Ⓒ – [生徒]
Ⓐ:スケジュールについての諸連絡
Ⓑ:入会・退会・急な連絡等
Ⓒ:実技のレッスン、そしてⒶと同じ内容


だが例えば「今月いっぱいで退会します」という連絡についてはどうか?もし退会の予定が決まっているならば、理由はどうあれ、これは生徒から先生に前以て直接伝えるべきであろう(上の図ではⒸに入るべきであろう)。何故なら先生は、今レッスンしている曲の進み具合から退会後の指針を示したり、気をつけるべき点などをアドヴァイスしておく必要があるからだ。
ところが、最近は先生に「辞めます」とは一言も言わず、受付だけに伝えて突然居なくなる生徒が後を絶たない。1人2人ならともかく、気がつけば今教えているレッスンセンターでこれまでに10人は下らない。中には連絡すらせずに消息を立つ生徒も。それも皆れっきとした社会人である。大人としての良識というものをつくづく疑わざるをえない。
最近も立て続けに2例あった。一人はとある初心者の男性。この人はかなり音も出てきて順調に進んでいたのだが、ある日レッスン時間になっても姿を現さないので受付に訊いてみたところ「退会しました」との事!しかももう1ヶ月も前にその予定だったそうだが、レッスン中は彼から何のアナウンスもなく、それどころか「じゃまた来週」「はい」なんて挨拶を交わしたばかりなのである。60代男性。立派な大人であるべきなのに、もう人を小馬鹿にしているとしか思えない、信じがたい言動。
もう一人はやはり初心者。OL。こちらはどうやら仕事が忙しくてなかなか練習する暇がなかったようだが、それでも音はしっかり出ているので、音階から簡単な曲まで1曲1曲確実に作って進んできたのだが…ある日連続して無断欠席するようになった。こちらは当然待ち惚けである。ごくたまに「体調が」「仕事が」と、欠席のメールをしてくる事もあったが、基本的には電話は全然繋がらない。そうこうしているうちにもうかれこれ3ヶ月も顔を見ていないが、月謝は自動引き落としなので、既に5万円以上もドブに捨てている事になる。練習していなくても顔さえ見せれば、いろいろアドヴァイスできるのに。2oと数万円の楽器をローンで購入した人だけに、この金銭感覚が自分には全く理解できない。
そう、上記2名に関する共通点は、入会に際してマイ楽器を新しく購入したばかりという事。折角買ったのに…と思う反面、考えようによってはまだ新品に近い状態の方がオークションに出し易いとも言えるのか。興味が失せるや否や売ってしまうのも、何か悲しいものがあるが…。そして何故かこの二人、両者共サキソホンの経験者でもあった。まあこちらはただの偶然であろうが。
個人レッスンでは、当然先生と生徒の間で入退会も諸連絡も全部直接する。技術的な事だけでなく、相談にも乗ったり乗られたりで、楽器を通して人間同士のコミュニケーションを深めていく事ができる。この両者とのに「窓口」が入ると、どうしても事務的な連絡はこれを通さざるを得ない。この“三角関係”は勿論便利な時もあれば、このように残念な思いをする事が多々ある。一言も挨拶なしに辞めていけるのは「お金さえ払えば」という驕り高ぶった感覚によるものであろう。生徒=お客という感覚をどの程度持つべきなのか、持つべきではないのか、その辺りのバランスが崩れちゃうとこういった人間に成り下がってしまう。
思うに、こういう風に教室や先生に迷惑や心配をかけまくっている人というのは、元々そういう性格なのであろう。「三つ子の魂百まで」とは言うが、恐らく会社でも同じように顰蹙を買いまくっているかも知れない。まあ、自分には関係のない事だが。

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