藝大100年
30年前の今日11月27日、サントリーホールにてこんな本番があった。
「藝大開学100周年記念演奏会」という訳で、演目はシェーンベルク作曲のオラトリオ「グレの歌」。ご覧の通りもの凄い編成で、合唱は後部客席に陣取っている。指揮は故・若杉弘先生。芸大オケ(現在の藝大フィルハーモニア管弦楽団)がメインで、教員・学生・外部エキストラ、そして学生合唱が参加。自分も当時大学院生で3番ピッコロで乗っている。
実はこの本番の丁度1ヶ月前、自分は原付バイクで事故に遭い、顔の頬骨骨折という重傷を負って入院していた。だからこれに出るのは諦めていたのだが、この後自分でも驚く程のスピード回復で、リハ初日になんと間に合ってしまった。
11月の芸大は「合唱定期」という演奏会があるが、これは合唱付きオーケストラの演奏会のことであり、この年1987年は演目がこの「グレの歌」であった。春の定期演奏会では、フランスの巨匠ジャン・フルネ氏を招いてドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」、ラヴェルの「ダフニスとクロエ」第2組曲、そしてベルリオーズの「幻想交響曲」という凄まじいプログラムで、同じくこのサントリーホールにて公演。その時も院生の自分はピッコロを吹いていた。
省みれば、当時団員でもなく増してや経験の少ない学生の分際で、100周年という大事なイヴェントの、しかもこんな大曲でソロだらけのこのパートを沢山任されたのは、とても光栄な事であった。が、裏を返せば、そうせざるを得ない大人の事情があった訳で、そんな事は当時の自分にもバレバレである。普通なら院生が事故ったなら何とかして他の団員もしくは外からエキストラを招んで賄うだろうに、それができないのは単にそれだけ人材不足だった訳だ。そう、人手不足ではなく人材不足。
この時から約10年後、自分は既にこのオーケストラの正団員となっていたが、同時に都内の別のオケの同じような“大人の事情”のお蔭で随分エキストラとして稼がせて貰った。現在このオケも当時の何倍も人材に恵まれているので、自分が乗る事はなくなったが。
さて話を戻すが、あれから30年って事は、今年は東京藝大創立130周年な訳で、来年1月には様々なイヴェントが予定されている。ただ、藝フィルでの出演予定はなく、いうなれば今夏のチリ公演と、今月9日に開催されたチリ公演記念演奏会がその一環として、という事か。
今後何回キリ番の年が来ても、G大にはかの立派な奏楽堂がある(100周年当時には今の建物は無かった)。ので、改修でもしない限り会場はここになるであろう。もし次にサントリーでやるとすれば、200周年ってところか(笑)自分は多分もう居ないが。