オーケストラ,  藝フィルレポート

藝フィルとの35年(その5)歴代外国人指揮者考察

フランシス・トラヴィス

1989〜1994 客員教授
【テンポ感】
無いに等しい。1小節とて保てない。
【表現力】
あまり無い。が、第九の終楽章で「ヘェ〜、此奴にも少しは音楽があったのか」と思う瞬間が1回だけ。
【効率性】
意味なく2〜3回通したり止めてみたり。一体何をやりたいのか、さっぱり通じない。
【人柄】
悪くないかも。気さくな爺さんっぽいが、近づかないにこしたことはない。
【メンバーの評判】
当然最悪。皆んな怒ったり呆れたりで、リハの雰囲気はいつも悪い。
【自分的評価】
★★★★★

早く自国に帰って欲しかったが、なかなか帰らなかった。余程居心地がよかったのだろう。彼は嘗てかのイサン・ユン氏を極刑の危機から救ったという英雄列伝がある。が、それを何かと自分でもアピールしていたのにはどうかと思った。芸大は何故招んだのか?貴重なオケの時間を返して欲しいものだ。

ウォルフディーター・マウラー

1991〜1995 客員教授
【テンポ感】
良いと思う。
【表現力】
素晴らしい。
【効率性】
日本語を努めて話すところはなかなか勉強家。オペラでは音程の悪いキャストの学生に「イツモタイヘン高スギマス」と注意していたのが大ウケだった。ただ、例えば「Attention」を「危ない」と習っていたのか、指揮しながらよく「アブナイ」と叫んでいた。多分彼の日本語は一旦英語に直すとよく解るようだ。
「フィガロ」では自らチェンバロでオブリガートの弾き振りをしていたので、その能力も長けていたのが素晴らしい。だがこれも一ぺんだけ、凄い不協和音を弾いていたのがまた笑える思い出。
【人柄】
明るくてよく喋り、場を和ませる人柄。一回だけ、ホルンのメンバーがリハで勝手にトラを入れたら、ちょっと怒っていた場面があった。それはそうだろう。
【メンバーの評判】
振り方がワイルドなので、一部の楽員には不評だったみたい。
【自分的評価】
☆☆☆☆☆

最高!それまでの外人に比べて遥かに「音楽」が感じられた。一緒に仕事ができて、とても幸せであった。

パブレ・デシュパイ

1995〜1997 客員教授
【テンポ感】
普通。これだけでも前任者(=トラヴィス)から見れば神。
【表現力】
何か動きが硬い。
【効率性】
多分頭のキレはいいと思う。
【人柄】
暗い。笑ったところを見た事がない。何を考えているのかわからない。学生の新曲に関しては全くやる気ないのが見え見え。
【メンバーの評判】
就任当初は良かった。でも次第に落ちてきた。あまりにも正確さを要求する故、声楽科のK教授に「好きに歌わせろよ!」とキレられた事もある。
【自分的評価】
☆☆☆★★

極めて普通。「巨人の星」の「左門」に似ている。確か大野和士さんがクロアチア辺りから引っ張ってきた人。あの辺りの国は当時情勢が最悪だったので、多分明るさというものを忘れてしまったのかな、とも思う。

ゲルハルト・ボッセ

1995〜1997 弦楽科客員教授
【テンポ感】
爺なのでヨボヨボ。
【表現力】
爺なのでヨボヨボ。
【効率性】
悪い。爺なので多分ボケてる。
【人柄】
意地悪い。何となく東洋人を見下している感覚がある。
【メンバーの評判】
ゲヴァントハウスでコンマスをしていたそうな。ドイツ物については一定の評価をする楽員もいたが、指揮者としては所詮素人。例えばリハの進め方などは要領が悪く、時間をオーバーした時には楽員の方が怒って皆で帰った事もあった。
何より、この爺の日本人の奥さんが最悪。いつも側にいては通訳していたが、その言い方が高慢的だったので、ボッセとセットで大不評であった。
【自分的評価】
☆★★★★

嫌いなので、此奴が振る時はなるべく乗らないようにしていた。

ジェームズ・ロックハート

1998〜2000 客員教授
【テンポ感】
普通。
【表現力】
これも普通。身体が大きいので、自然に豊かにも見える。
【効率性】
よく判らないが、どんな曲も1回だけ、多くて2回通すだけなので、とにかくリハが短い。やる気がない訳ではなく、的確な指示も飛ぶ。だから頭はいいと思う。
【人柄】
穏やかでシブい声。口数少なく、淡々と仕事をこなす感じ。厳しさも兼ね備えている。
【メンバーの評判】
嫌な評価は聞こえてこないが、かといってあまりにも練習しないと、コンマスや楽員側から要求が出る事もしばしば。
【自分的評価】
☆☆☆★★

正直、この人の棒で吹いた記憶が薄いので、あまり印象はない。ラウタヴァーラの交響曲というマニアックなプログラムの時でさえ、リハはあまりやらず、オケが困惑していると、彼はそれを「自分の師匠の教えによるもの」「いい指揮者は、リハはあまり練習しないものだ」と説明していたのが印象的だった。

ハンス・マルティン・シュナイト

2002〜2004 客員教授
【テンポ感】
普通。
【表現力】
乏しい。
【効率性】
あまり頭が良いとは思えない。
【人柄】
瞬間湯沸かし器。ニコニコしていたと思ったら、いきなり切れる。その切れ方から察するに、多分笑っている方は演技で、性根は最悪。女好きのエロ爺。
【メンバーの評判】
神奈川フィルの常任でもあり、そこの評判は悪くなかったようだが、芸大では最悪。リハも「ピアノ!」の連続で満足に進まず、初っ端は必ずすぐにストップ。ストレスの塊であった。
【自分的評価】
黒星すらつける価値無し。

歴代で最も大嫌いな指揮者。顔も見たくない。2018年に地獄に落ちた。

ダグラス・ボストック

2011〜2014 招聘教授
【テンポ感】
名前のせいか、戦闘機並みに速い!緩急の変化、特にソリストに合わせるのは苦手そう。
【表現力】
大柄なせいか、大胆不敵という感じ。逆に繊細さには欠けるかも。
【効率性】
そんなに頭の切れる人だとも、馬鹿な人だとも思ったことはない。ただ、場の空気は読めないかも。
【人柄】
裏表なく見えるが、佼成WOの常任時代には良からぬ噂も耳にした。でもいつも大らかで明るい感じ。時折フォルテの振り始めに「ハアァァ!」という無声音をよく響かせるのがウザい。
【メンバーの評判】
悪い。テンポが解り辛い・ソリストに合わせられない等の理由で、彼が振ると皆文句タラタラだった。
【自分的評価】
☆☆☆☆★ 自分は実はとても好きだった(変な意味ではなく)。テンポの細かい点については、自分にはどうでもよく、寧ろ速いからリハも本番も早く終わってくれるのが嬉しい。嘗て自分が佼成WOにエキストラに行っていた事を覚えていてくれたのも嬉しかった。ああやって豪快に振って音楽を楽員に任せちゃうスタイルは、他メンバーに不評でも自分には好都合で吹きやすかった。

ペーター・チャバ

2010・2016 特別招聘教授
【テンポ感】
テンポよりも「フレーズ」を与えてくれる感じ。オケに任せながらも要所要所で的確に指示。
【表現力】
大きい図体を揺らし、汗だくになりながらも体一杯に表現する。
【効率性】
かなりのキレ者。いつも「なる程そうか…」と思えるような指摘が飛んでくる。適当に吹いていると檄を飛ばされそう。
【人柄】
厳しい。リハ中は怖い位だが、それ以外では優しそう。
【メンバーの評判】
最高。高評価。コンサート後、全員が満足した雰囲気があった。
【自分的評価】
☆☆☆☆☆ 素晴らしい。オケが一点に集中してバッと弾ける感じ。あれだけパワーを引き出せる指揮者は少ないだろう。一方で繊細さもハンパない。いい意味で緊張感が保てる。彼の指揮で演奏できて幸せであった。

ジョルト・ナジ

2010・2016・2021・2022 卓越教授
【テンポ感】
最初はそれほど違和感を感じなかったが、最近の演奏ではかなりヤバくなっていた。つまり忘れっぽくなったようだ。リハでは問題なくても、ゲネプロや本番では「速過ぎるだろ」「遅過ぎるだろ」なんてのがザラ。
【表現力】
彼の変拍子はどういう訳か得てして解り辛い。そして現代曲以外の曲を振った時には、最早何の音楽性も無いことが判明。
【効率性】
とにかくしつこい。リハでは細部に拘って何度も繰り返したりするが、結局だからといってそれほど効果が上がらず、曲全体が見えずに時間が来てしまう事も。結局計画性の片鱗も無いことが判る。
【人柄】
シューマンのPf協やシベリウスのVn協を振った時などは、こんな有名な曲なのに無知ぶりを発揮。だが、曲が乱れた時に敢えて注意をしてマウントを取る辺りは、最早オケには哀れに映る。要するに性悪で、あまり近寄らない方がいいタイプ。
【メンバーの評判】
初来日の時はまだ良かった。そして次第に悪くなっていった。
【自分的評価】
☆★★★★

彼は2回来日しそびれた経験がある。1回目は火山の噴火による飛行機の欠航。2回目はコロナウィルスによるコンサート中止。それだけにやっと日本に来られたという想いがあるだろうが、それならば何故もっとリハが円滑に進むよう準備しておかなかったのか?大分メタボな身体になっていたから、大方寿司でも頬張りながらボーッと生きていたのだろう。とにかくこれで3回もGフィルを振ってくれたのだからもう十分であろう。

ラースロウ・ティハニ

2016〜2018 卓越教授
【テンポ感】
2016年の「リゲティ集」の時は曲解釈といいテンポ設定といい、流石だと思った。あの難曲を短い期間でまとめ上げたのは流石だった。その後も定期やモーニング等でも振っていたが、これといって演奏し難い印象はない。
【表現力】
リゲティのような難解な現代曲はともかくとして、定期の「ハーリヤーノシュ」「火の鳥」辺りになってくるとちょっと地味な感じ。
【効率性】
時折ムカつく程しつこい事がある。現代音楽でホルンとバスフルートの微分音のピッチを細かく合わせていた時は「アホか!?」と思った。意外と理解不能な面も見せる。
【人柄】
コンサートの終了後は率先して楽員と呑みに行きたがっていた。仕事以外ではフレンドリーで気のいいオジサンタイプ。自分は参加しなかったが。
【メンバーの評判】
よく判らないが、畏らく半半位で分かれていそう。
【自分的評価】
☆☆☆★★

あまり楽しい印象はないが、かといってもう来るなという程でもない。「リゲティ集」の2回目も彼に振って欲しかった。。。

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