拝啓55の君へ
アンジェラ・アキさんの「手紙〜拝啓15の君へ」という歌が大ヒットして数年経ったある日、自宅の楽譜を整理していたら、自分がそれこそ12〜18歳位の頃に作曲した五線ノートが何冊か出てきた。全て鉛筆書きだ。
その中で一番小さい青いノート、その表紙には「パガニーニの主題による45の変奏曲」「’80」とある。1980年、自分が高校3年生の時の無伴奏フルートの作品だ。こんなの作ったのか…あまり覚えていないのだが。「パガニーニの主題による〜」といえば、有名な変奏曲がパッと3曲ほど思い浮かぶ。ブラームス、リスト、ラフマニノフ…まあ、それにあやかって「自分も作ってみよう」といったところか。
中身を見てみると、なかなか面白い。
最初は割と“無難”な変奏曲が並んでいるが、番号が進むにつれて次第に複雑かついろいろな試みがなされてくる。和音進行ではなく元々のリズムの特徴のみをベースにした変奏、変拍子、ハーモニックス、フラッター、キーをポンポン叩く、頭部管を著しく抜いてin Hにする…等と、次第にコワれていく自分が浮き彫りになっている。そもそも45という曲数が尋常じゃ無いので、演奏者(&鑑賞者)が飽きてしまわないよう「間奏曲」という名目の全く関係無いエチュードみたいな曲が2曲、途中に挟まっているし。
しかしこの曲集、清書されているのは第43変奏まで。あと2曲は素材と構想のみ残っている。中断せざるをえないのは、多分大学受験が迫っていたのだろう。なので、この度これらを元に清書してみた。勿論そのまま鉛筆書きで。従って正確には今年2017年完成、着手から37年かかったという事か。
さてこの曲集、いざ吹いてみると…これがかなり難しい。当時の自分がこんなの吹けたのか?この点がもの凄く不思議だ。何だか18歳の自分の「今は難しくて吹けないけど、将来この曲が吹けるようになりますように。拝啓、55歳の湯本洋司様へ」というメッセージ的なものすら感じる。
今日はその55歳の誕生日。来週のリサイタルではこの曲集より、何曲かチョイスして演奏してみようと思う。