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ボナールとテラス

また1人、好きな画家が増えてしまった。サルバドール・ダリ、ルネ・マグリット、そして先月の東山魁夷…等。そして今回、新たにピエール・ボナール
元来、写実・非現実を問わず、割とはっきりした表現法の絵画が好きな自分だが、今国立新美術館にて開催されている「ピエール・ボナール展」で観た一連の絵画は、先のお三方に比べて大分画法がボヤッとしている。言葉は悪いが、カンヴァスに適当に筆を置いていったような、雑な感じ。
それなのに、絵をじっと見つめれば見つめる程、画中の人物の表情や、その心情までもがこちらに伝わって来て、何だかこう…思わずニヤッとしてしまう。自分が特に好きなのがこの「バンジョー奏者」。


バンジョー奏者が逆光でほぼ真っ黒に描かれているのに、ああ髭生やしてんだなとか、相当激しくかき鳴らしてパフォーマンスしてんだなとか、左後ろのオジさんはホルンを吹いてるのかなとか、前のオバさんは嬉しそうとか、一見雑に見えても実はかなり細かく臨場感が伝わってくる。この絵に何人描かれているか、探すのも面白い。

ところでボナールが活躍した19c〜20cのフランスといえば、丁度ドビュッシーやラヴェルが居た頃でもある。そんな中、この展覧会では1人の作曲家が自分の目に止まった。
クロード・テラス。誰それ?聞いた事ないが、どうやらボナールの妹の旦那、つまり義弟らしい。義兄は彼の肖像画を書いていて、それがこれ。

かなりインパクトのある面立ちである。ググってみたらまさに同じ容貌の写真が出てきたので、思わず笑ってしまった。普通の絵画のみならず、戯曲のポスターや挿絵なども手がけていたボナールだったが、この義弟の作曲した楽譜にも挿絵を提供している。この事から義兄弟関係はとても良かった事が察せられる。

で、この展覧会ではその挿絵付きの楽譜が何点か展示してあった。テラスって一体どんな曲を書くのか?すぐさま譜読みしたり、後にググってみたりもした。展示楽譜はピアノ曲だったが、オペレッタなどの舞台音楽をよく書いた作曲家のようだ。古き良きパリのムーラン・ルージュを彷彿とさせるような作風である。かなり稼いでいたのか、5人も子供をもうけ、裕福な生活をしていたらしい。

ボナールは絵画だけでなく写真も撮り、会場にはそのスナップが30点程展示されていた。友人や親戚が集まって戸外で戯れる白黒写真の中には、義弟テラスも写っている。中にはボナールの妻、幼い甥っ子姪っ子(テラスの子供達)、更には自分自身が素っ裸になって被写体となり、後の創作のヒントを得ようとしているのもあった(今の時代では大問題となりそうであるが)。

南フランスの別荘地にて79歳で亡くなったボナールだが、彼の遺作「花咲くアーモンドの木」では、既に筆も持てなくなっていた彼を助けて仕上げてくれたのは、テラスの息子シャルルであった(この時テラスは既に逝っていた)。こういった一面一面にボナール家とテラス家の結束みたいなものを感じる。

花咲くアーモンドの木