…のオーケストラ作品集というコンサートが過去にありまして。
ジョルジュ・シャーンドル・リゲティ(1923〜2006)は、J.ケージ・K.シュトックハウゼン・O.メシアン等と並ぶ代表的な現代音楽の巨匠ですが、この演奏会での体験はかなり印象深いものがありました。
要するにどの曲もこれまでにない程の難曲だった訳ですが、今回はその一部を過去の記事を元に再編しておきましょう。

まず驚いたのが、そのスコアの緻密さです。ライセンス上その詳細は省きますが、その殆どがまるで某国の絨毯、或いは匠(たくみ)のナントカ細工のように、非常に細かい音符が綺麗に散りばめられ、別の意味での芸術品にもなり得る程「見た目」が美しいのです。
という事はつまり、その細かい音符を演奏しなければならない訳で、とにかくそれがいちいち難しく、さらっていると指だけでなく目や肩にも負担がかかってきます(苦笑)。
そして時には、これまでのオケパート譜にはなかった演奏指示もありました。

怒涛のパート譜

【パターン1:音域外の音】
ヴァイオリン協奏曲ではピッコロに第4オクターヴのD音が出てきます。これはピアノの一番右側にある鍵盤よりも更に高い音で、楽器によっては最早どんな運指でも音は出ません。筆者の場合はピッコロの頭部管だけを使い、アルミ棒を差し込んで、何とかその音を出しました。

【パターン2:リコーダーの持替え】
同じくヴァイオリン協奏曲では1st.Fl.がアルト・リコーダーに、そして2nd.Fl.がソプラノ・リコーダーに持替える場面が出てきます。このようにFl.セクションがリコーダーに持替えるオケ曲は他にもない訳ではありませんが、この曲の場合はオーボエやクラリネットが何とオカリナに持替えて吹いたりもしますので“見どころ満載”です。

【パターン3:実はSoloではなくSoli】
13奏者の為の小協奏曲では恐ろしく速い32分音符が延々と続く部分が後半に登場します。ピッコロのソロならまだしも、実はバス・クラリネットも4オクターヴ下で全く同じことをやっているので、一緒に進まねばならず、誤魔化す事はできません。ですが、これがピタッと揃った時の音楽的効果は、決して他の作品にはない魅力が出ると思います。

【パターン4:指揮者と違う拍子で演奏しなければならない】
例えばピアノ協奏曲の一部ですが、いわゆる小節の中の「譜割り」がパートによって違い、基本の拍子は8分の12拍子、ところが自分のパートは「2+3+3+4」みたいな事になっています。他のパートの事もあるので指揮者は普通に12/8で振り、自分はそれを見ながら「2+3+3+4」とやっていかねばならず、凄まじい“脳トレ”だったのを憶えています。

【パターン5:指揮者と違うテンポで演奏しなければならない】
これが一番インパクトありました。13奏者の為の小協奏曲にて。ある部分では指揮者が4拍振る間に自分は5.5拍分の小節をこなさねばならなかったり、またある部分では指揮者がリタルダンドしているのに自分はテンポキープで進む…そうすると、指定の場所で全体が合うようにできていたり等。
いうなれば指揮者とオケの関係を覆すような場面でした。

リゲティといえば、管楽器奏者にとっては「5つのバガテル」という木管五重奏曲が比較的ポピュラーで、とても聞き映えのする楽しい曲ですが、一方でこんなに深い作品があるとは、ある種のカルチャーショックを感じた次第です。