ここでは筆者の演奏経験を元に、オーケストラのフルートパート譜について気をつけている事などを簡単にまとめております。
今回はチャイコフスキーの7つの交響曲のうち、ポピュラーな第4,5,6番のピッコロ・パートについてです。

交響曲第5&6番は3rd.Fluteとの持替えですが、ここではPiccoloのみについて記述します。

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【交響曲第4番】
第3楽章
[1]30分以上待たされた挙句、いきなり高音から始まるメロディーですが、第169小節の後半はピッチが不安定になりがちですので要注意。
[2]有名なソロです。指定はPになっていますが、まずPで吹く人はいないでしょうね。。。しかし、だからといって絶叫っぽくは吹かない方がいいと思います。五線の中の音域が重たい感じになってしまいますので。
第195小節のHigh-F(○印)がちゃんと鳴るようにしましょう。筆者の場合は替え指を使っています。そして次の小節の一番最後のHigh-As(○印)も。
短いフレーズですが、とても奥深いので、いろいろ工夫を凝らし、そして考えながら百万回位(笑)繰り返して練習し、ポイントを掴んでこのワンチャンス(正確には2チャンス)に集中する、という事でしょうね。
ただこの中間部では、本番中でも『心の中で』リハーサルができる部分があります。第170小節からの金管群のメロディーに乗って、このフレーズを何度もイメージできます。そうして『本番』を迎えるのもコツのひとつでしょうね。
[3]第357小節はpiúf、そして361小節はmfとなっていて、一見piúfの方が強く吹くように見えますが、実際は逆です。というのは第349小節からの1st.&2nd.Fl.はpp、そしてpと来るので、357小節は「それよりは大きく」という意味です。要するにmp辺りが妥当ですが、作曲者が敢えてそう書いていないところが興味深いですね。ただ、ここのメロディー部分はピッコロと1st.Ob.だけなので、バランス的には少し目立った方が良いかも知れません。

第4楽章
[4]あまり特筆すべき所はなく、皆と一緒にノリノリで吹いていけば(笑)と思いますが、注意すべきは第266小節目からのフレーズです。オケ全体がシンコペーションで、各拍の頭を奏しているのはシンバルのみ。筆者の経験では、各駆上がりの頂点の八分音符(○印)を割とテヌート気味に吹いていくと上手く乗れると思います。第268小節の最後の駆け上がりがくれぐれも遅れないように…。

【交響曲第5番】
全楽章、チョコマカと持替えがありますが、“ピッコロらしさ”が発揮される部分は殆どありません。強いて言えば第3楽章中間部の16分音符群位でしょうか。それ以外は他パートの音域的補助や、Tuttiのサウンドに色を添える程度です。
[5]その第3楽章第92小節ですが、慣れるまではしっかり拍を数えておいた方が良いです。3/4拍子なのにこの辺りは2拍子っぽいフレーズがずっと続きますので。また、第96小節の3拍目からのキャラクターの変化、特にダイナミックスをサッと落とす事に気を付けますが、同時に小指1本の「Fisis-Gis」の反復が滑り易いので、それも注意しましょう。

余談ですが、昔とあるオケのとある公演にてこの曲を演奏した時の事。その時の指揮者に、このパートの第4楽章のコーダ(ホ長調〜)を丸々ピッコロで吹くよう指定された事があります(オリジナルは3rd.Fl.)。その結果、全体のfffの中でもひときわピッコロが目立って聞こえるようになりました。お蔭で実に“持替え甲斐のあるチャイ5”だったのを憶えています。

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【交響曲第6番】
第1楽章
この曲でもピッコロは「音域捕捉係」として働く場面が多く、“らしさ”が出ているのは展開部の第255〜258小節のたった4小節のみ。チャイコフスキーはこの楽章のTuttiに於て、あまり煌びやかなサウンドは求めていないようです。しかしながら、冒頭第48小節に出てくる小さなフレーズ[6]は、ピッチを2nd.Fl.や1st.Cl.と合わせるのは至難の業です。最初のCisを“高めの替え指で低めに入る”というのがコツかも知れません。

第3楽章
この楽章では最初から最後までピッコロのみですが、割と低い音域でfff等が連発されたりします。高音域のフレーズ部分は流石にピッコロの存在感満載ですが、決してソロではなく必ず何処かのパートと同じ事をやっていますので、常にそれを聴き一緒に進んでいくようにしましょう。
例えば、[7]第37小節&175小節からのフレーズはかなり目立ちますが、第1ヴァイオリン及びチェロのピッツィカートと同じ音型です。弦をはじくような鋭いタンギング、そして適度に響きのある音で。あくまでもpですので、差し当たりあまり強くは吹かない方が良いでしょう。周りは皆3連符なので、くれぐれも八分連符は釣られて流れないように。