ここでは筆者の演奏経験を元に、オーケストラのフルートパート譜について気をつけている事などを簡単にまとめております。
初回はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲です。

各項目「♪」についての共通事項
第1フルートに関する事 …〈1fl.〉
第2フルートに関する事 …〈2fl.〉
両者に関する事 …〈1&2〉
とし、[1]等の数字表記は各譜例の指摘箇所を示します。

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【第1楽章】
♪〈1&2〉[1] 第61小節は一旦Pに落とす場合があるので、一応指揮者の動きに注意しておいた方が良さそうでス。
♪〈1fl.〉[2] 最初に目立つフレーズは、第89&91小節のアルペッジョだが、1拍目のクラリネットを聴いてから吹き始めると、大抵は遅れるので、2拍目と同時に入る5連符のつもりで食い込んだ方が良いと思います。これは再現部(第265、267、269&270小節)でも同じです。
♪〈1&2〉[3]第155小節2拍目について。同じパターンが続いている中で、何故かここだけ四分音符で書かれています。作曲者の意図によるものかどうかは判らないが、差し当たり楽譜通り(四分で)演奏してみましょう。指揮者が八分音符で揃えるよう、変更を求めてくる場合もあります。
♪〈1fl.〉[4]ヴァイオリンのカデンツァ終わりのソロについて。ポイントは直前のソリストのA-Hのトリルのピッチ。その傾向(大抵はちょい高め)を捉えて、自分もテーマの最後のA(第215小節)に持って行くようにする。そうしないと、ソリストもまさに同じ音が重なるので、合わなくてちょっとキモチワルイことになってしまいます。

【第2楽章】
♪〈1fl.〉[5] 第33小節からのソロについて。35小節目の3拍目にはもうクラリネットがPで入ってくるので、トリルは早めのdim.で。37小節目3拍目はCl.とユニゾンになるので、音量よりもピッチに気を遣うべきだと思います。
♪〈1fl.〉[6] 後半の1st.オブリガードについて。第77小節は奏者の好みにもよるが、曲想を加味するとあまりリズムが“跳ね”ない方が良いですね。次からのCl.のスタッカートを引き立たせる意味でも。
♪〈2fl.〉[7] 第115小節について。2人が2度で重なる場合は、上の音が比較的聞こえるべきであるが、この場合はPなので、2nd.の方がより小さく吹いた方が良いでしょう。

【第3楽章】
♪〈1&2〉使い慣らされたパート譜を見ると、随所に鉛筆で「カット」の書き込みが見られる。つまりこの第3楽章は、楽譜をそのまま再現すると同じパッセージのリフレイン等がとても多いので、これをカットして演奏される事がよくあります。
しかし昨今、全くカットしないヴァージョンも増えているみたいで、リハの開始時にその辺を確認しておくと良いでしょう。何も言われないままリハが始まった場合は、大体ノーカット版のようですが、それについては先ず初回のカットの有無で大体判断できます。つまり第58小節からの全休が32小節あるか、それとも18小節かという事。カットされていなければおそらくフルヴァージョンでしょう。
♪〈1&2〉[8] 第165小節について。曲中最もテンポに注意する箇所です!いきなりTempo Iになるのでサッと対応しなければならないのですが、戻し過ぎて走らないように。ファゴットの四分音符を聞くのがコツです。また2人がユニゾンなので、くれぐれも音量については強すぎないよう注意すべきでしょう。
♪〈1&2〉[9] 第393小節のオクターヴのオブリガートについて。ここのVn.ソリストはフラジオレットなので、音量にはかなり気を遣ってください。表記はPPだが、更にPPPのつもりで。

♪〈1&2〉[10]全体的に、ダイナミックス(強弱)がFFFで書かれている場合でも、ソリストが弾いている箇所では大抵の場合は抑えた方が良いです。特にこの曲では第1楽章の第320小節以降や第3楽章の第598小節以降。指揮者からも同様なアナウンスがよくあります。

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