木管楽器セクションでは、各譜面台に専用プレートがセットされていて、奏者はそれにメンテナのキットやらリードやら筆記用具やら、いろいろな小物を置いているわけですが、筆者の場合は独自のオリジナルを使っています。
というのも、自分はその道具の類ではなくピッコロを置くので、それなりに頑丈なプレートでなくてはならないからです。

何故脇にある持替え用の椅子に置かないのか?まあ別にそこにおいても良いのですが、曲によっては瞬時に持替えなければならない場合もある訳でして。
今回はそんな曲について検証してみましょう。

持替えをするパートは?
フルート・セクションの中でピッコロに持替えるパートは主に3番又は2番奏者ですが、稀に1番が持替える場合もあります。主なオケ曲でその辺ザッとまとめてみると、こんな感じです。

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楽器を持替えるのに必要な時間
楽器の持替えに必要な時間は、最低でも5秒程度。つまり、例えば「Allegroで4/4拍子」でしたら、少なくとも3小節分の休みは欲しいところです。
ところが世の中には、そういう“気配り”が全然ない曲があるものなんですね。真っ先に思いつくのは(業界では有名かも知れませんが)バルトークの「管弦楽の為の協奏曲」。ここの第3楽章ではピッコロのソロが終わった後、たった1拍でフルートに持ち替えなければならない場面があるのです。そのままピッコロで行っちゃいたいところですが「ピッコロで吹いちゃダメです」と、ちゃんと作曲者の但し書きがついています。まあそれでも、何とか工夫すれば可能といえば可能ですが。
ところが、更に凄いのがありました。トマジ作曲の「アルトサキソホン協奏曲」ここの第2楽章と第3楽章はアタッカ(=間髪入れず)で突入しますが、一瞬ブレス記号(❜)が挟まっています。その間にフルートからピッコロの持替えがあるのです。ほぼ休みは無いに等しい。。。
藝フィルでは何度か演奏しましたが、オケの中で「ちょっと待ってー」とパニクっているのは多分自分だけでしょう(笑)で、どうしたか?こうして乗り越えました!

特殊楽器奏者への気配り
このようにピッコロに限らず、特殊楽器奏者にどの程度気を配ってくれているかは、作曲家によって大いに違いが出てきます。具体的には主に「音域にそぐわないダイナミクスを要求していないか」「待ち時間が長過ぎないか」「酸欠になりそうな程キツいフレーズがあるか」そして「持替え時間が短か過ぎないか」。大雑把な自分の独断と偏見では…

ベートーヴェン…△
ベルリオーズ…○
ブラームス…×
ドヴォルザーク…△
マーラー…×
ラヴェル…○
ヨハン・シュトラウス…○
リヒャルト・シュトラウス…○
ショスタコーヴィチ…△
チャイコフスキー…×
ヴェルディ…○ という具合です。

因みにバレエ音楽、例えば「ドンキホーテ」(ミンクス)・「コッペリア」(ドリーブ)・「ジゼル」(アダン)等は、知名度はちょっとマイナーかも知れませんが、ピッコロにはどれも◎!実に吹き甲斐のある曲ばかり。強いていえば、あまり休みがなくて忙しいのですが。

藝フィルではよく現代音楽も演奏しますが、昨今アルトやバスフルート等は元より、“フルート属”の壁を乗り越えて持替えさせる曲がちらほら出てきました。例えばリコーダーやスライドホイッスル等。これらはフルート奏者でなくても吹けるので、他の管楽器や弦楽器、打楽器奏者に回すこともあります。
ですが、やはり持替えるからには、それなりの音楽的効果が無くてはなりません。場合によってはいろいろな工夫も必要です。
そんな自分の一体験談を過去に掲載しました。まあ、ご参考まで…。

スライド・ピッコロ