ここでは筆者の演奏経験を元に、オーケストラのフルートパート譜について気をつけている事などを簡単にまとめております。
今回はショパンのピアノ協奏曲第2番です。
ショパンのピアノ協奏曲の第1番と第2番が、実はできた順番が逆、というのは有名な話ですが、ついでにピアノのソロはあんなに素晴らしいのにオーケストレーションについてはからっきしヘタ、というのもよく聞かれます。
本当にそうなのでしょうか?少なくとも自分にはあまりそれは感じられず、特にこの2つのピアノ協奏曲に於けるソロピアノのサポートは絶品だなぁ、なんて思うのです。個人的には弦楽器群によるフワッとした“空気作り”が大好きですね。
ただひとつ、この2つのコンチェルトについて共通に気になることがあります。良し悪しということではないのですが、それは「リフレインが異常に多い」ということです。具体的には、同じフレーズを2度繰り返す場面がなんて多いのか。しかしながら、これを仮に1回ずつにしてみると曲の長さはそれこそグンと短くなるものの、とてつもなく変な曲になってしまいます。やっぱりフレージングって大切。ちゃんと2回ずつ出てくるのはそれなりに意義があるのでしょうね。
でも、2回あるからといって特に違い(例えばダイナミックスに違いをつけるとか、或いは何か装飾するとか)を付けるような指定は殆どしていません。その辺のショパン自身の心理みたいなものを探ってみたいものです…。
各項目「♪」についての共通事項
第1フルートに関する事 …〈1fl.〉
第2フルートに関する事 …〈2fl.〉
両者に関する事 …〈1&2〉
とし、[1]等の数字表記は各譜例の指摘箇所を示します。
【第1楽章】
♪〈1fl.〉[1] 第41小節はソロです。pから入ってクレッシェンドとあるのは、オーボエからメロディーが移ってくるからです。従ってFのピッチに注意です。その次の小節でオーボエは6度下に回ります。このコラボは後にピアノソロでも出てきますが、音域的にはオーボエが勝ってしまいがちなので、少し音量は大き目が良いと思います。但し、第45小節は弦楽器にメロディーが移るので、サッとppに落とす方が効果的です。
♪〈1&2〉[2] 第56小節はクラリネットから引き継がれるソリで、特に1st.は2拍目にfがくるとそれまで小さく吹きがちですが、どうやらこのfはtuttiのfの意味のようです。従って両奏者共mf位でスタートして良いかと思われます。
♪〈1&2〉[3]この曲のパート譜は全体的に小さめに印刷されていますので、何処までがガイドで何処からが本音符か、判り辛いことがあります。第180小節はガイドではなく本音符ですので、一応念のため。
♪〈1st.〉[4]第200小節から252小節までの間はショパン独特の展開部の空気が流れていますが、各木管の1st.が常にソロやソリで色付けをしています。基本的にはダイナミック通りに吹きますが(筆者の経験では)第236小節のソロと第249小節辺りは音域的にフルートは埋もれがちですので、mf位で吹いても良いかも知れません。
【第2楽章】
♪〈1&2〉[5]あまり音のない楽章ですが、出てくる音がいちいちセンシティブです。特に第24〜25小節・第59〜62小節、そして第70〜72小節については音色・ピッチ・ダイナミックスに細心の注意を払うべきでしょう。
♪〈2nd〉[6] 第92小節、ここについては昔から疑問を感じています。何故ここだけ2人でユニゾンなのか?ショパンに何か思惑があったのか?若しくは何処かの段階でミスがあったのか?未だに謎ですが、ユニゾンで吹くとどうしても音量が増してしまいます。くれぐれも雰囲気を壊さぬよう…(過去にはこの部分を休みにしたこともありました)。
【第3楽章】
♪〈1st〉[7]第134小節は(有名な)楽譜のミスです!4小節前のクラリネットとリズムを合わせてBを四分音符、Esを二分音符にしてください。
♪〈1st〉[8]ここのソロで、特にフレーズ終わりの第140小節ではテンポに注意しましょう。指揮者が「rit.」の気配を示す場合があります。少なくともこの音域は運指の都合で「つるッ」と滑りがちなので、是非慎重に。
♪〈1&2〉[9]テンポの表示は何も書いていませんが、既に伝統ともなっているMeno mossoやrit.があります。フルートが関係する所は第404小節と、それから第491〜492小節。ここで大きなrit.がありますので要注意。特に後者は“ブレーキ”というより、最早“シフトダウン”の領域です。