もう10年位昔に書いた記事ですが、大事な事ですのでここでもう1回おさらいしてみようと思います。
オーケストラって、フォルテで「バーン」と鳴るイメージが強いと思いますが、意外と小さな音、つまりP(ピアノ)で吹く事もとても大切なのです。それも、そんじょそこらのPでなく(笑)、スーパー・ピアニッシモとも言える位の、小さな小さな音…それについてのこんなお話。
尊敬するピッコロ奏者、時任和夫氏(元フィラデルフィア管弦楽団)は、強弱記号のPについて、こう話していました。
「Pとは音の弱さではない。Pとは、その音楽が醸し出す空気である」
「例えば、森の中の湖畔の朝。朝もやのかかる中、森の中から鳥のさえずる声が聞こえる…何もかもが静寂…これ!これこそがピ・ア・ノ」等。
実際、ピッコロにとってPやPPを出すのは至難の業。フルートでも高音域ではかなり難しい事です。
そもそも単純に音を小っちゃくするだけだと、客席の後ろの方には聞こえなくなってしまいます。聞こえなければ意味がなく、「遠くまで聞こえる小さい音」でなくては、という訳です。
とはいえ、それにはどうすれば良いのか?残念ながらその具体的な方法については、ここで論じるのは無理かなと思える位、奥深い話ですが、ただ、スーパーピアニッシモからスーパーフォルティッシモまで自在に操れる時任氏の仰る通り、強弱については「音」の強さよりもその音や音楽から湧き出る「情景」のイメージを持つ事が大切だなと思うのです。
まあ、参考までにピッコロでPPを吹いている時の、自分のアンブシュアを載せておきましょう。
話はちょいと変わりますが、最近「パワースポット」や「ホットスポット」等、特定の場所の「スポット」という呼び名がよく聞かれますが、そういえば、自分が今までに見た景色の中で、このお話に匹敵するとっておきの「ピアニッシモ・スポット」があったな、とふと思い出したのです。
それは20年位前にバイクで走った道路、国道292号線(別名「志賀草津道路」と呼ばれ、日本で一番標高の高い地点を走る国道)のとある休憩所、とはいってもこんな風にちょっとした駐車スペースとベンチがあるだけ。
これはその道路から望む「横手山」。志賀高原から草津に向かってこの山を見ながら峠を登り、暫く行った所にその場所はありました。
バイクを降りてひと休みした時、あまりの静けさに感動しました。シーーーーン…とした空気の中、遥か彼方の山々からかすかに聞こえる鳥の声、時折フッと吹き渡る微風…今でも忘れられません。
時任氏のお話を思い出しながら、ピピッ!ときたのがまさにその場所でした。自分にとって最高の「ピアニッシモ・スポット」です。
ではここに、他にも印象的だった「PP・スポット」を幾つか。
楽譜にPやPPを見つけた場合、ご自身でこのような独自の場所を決め、イメージして演奏するのも良いかもしれません。