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FLUTE, SCORE, YUMO Theory

[曲紹介]ダマーズ作曲 24の練習曲

フランス近代音楽界の巨匠、ジャン・ミシェル・ダマーズ氏は1928年生まれ、そして2013年に85歳でこの世を去ったフランスの作曲家兼ピアニストです。数多くの器楽曲を作曲しましたが、中でも「フルートとハープの為のソナタ」「演奏会用ソナタ」や「木管五重奏の為の17の変奏曲」はフルート吹きにとってはお馴染みかも知れません。
フルートの為の練習曲集も何集か書きましたが、この曲集はフルート奏者:故アラン・マリオン氏に贈ったエチュードで、上級者の為の「新古典主義的練習曲」とされています。
如何にも彼らしいエスプリに富んだ曲想ですが、同時に予想をはるかに超える音楽展開で、結果的にかなり難易度の高い曲集となっています。

現在、この出版社の表紙デザインは替わっています。

この練習曲の特徴

「24の〜」といわれると、アンデルセンやベームのそれのようにC-Durから始まってシャープ或いはフラットが1つずつ増えて…長短24調全部経由するイメージですが、このエチュードは全くそれとは無関係です。
しかしながら各曲共必ず調性は定まっています。定まっていますが、調号は無く、全て臨時記号のみで書かれています。あまりにも転調が多いからでしょう。それ故臨時記号の有効性については、こと細かくチェックする必要があります。

曲の最初と最後で調性が変化しているのは第17番と24番のみ。それ以外は必ず元の調に収まっています。しかも圧倒的にG-Dur又はmollが多く、半分以上の13曲を占めています。それ以外ではC:が4曲、D:が2曲、フラット系はF: B: As:がそれぞれ1曲ずつ。しかしながら各曲中では、意外な所に転調するパターンで埋め尽くされているので、基本の調の多様性についてはそれ程重要でもないという事でしょう。

そしてもう一つの重要な特徴ですが、強弱の指定が一切ありません。これは恐らくずーっと同じ強さでという事ではなく、奏者のセンスでいろいろ付けてみてください、という事のようです。
速度についても、例えばAllegroとかAndanteとかの表記もなく、ただただメトロノームの数字のみです。これにもやはり、奏者の自由な発想を妨げないようにという、作曲者の意図が感じられます。


さてここでは、この“超マニアック”なエチュードを1曲ずつ実演を添えて紹介していきましょう。おそらく殆どの人があまり吹く事のないと思いますが、ダマーズ氏独特の音楽世界の片鱗を少しでも味わっていただけたら幸いです。

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FLUTE, YUMO Theory

[演奏メモ]『もちかえ』というスキル

木管楽器セクションでは、各譜面台に専用プレートがセットされていて、奏者はそれにメンテナのキットやらリードやら筆記用具やら、いろいろな小物を置いているわけですが、筆者の場合は独自のオリジナルを使っています。
というのも、自分はその道具の類ではなくピッコロを置くので、それなりに頑丈なプレートでなくてはならないからです。

何故脇にある持替え用の椅子に置かないのか?まあ別にそこにおいても良いのですが、曲によっては瞬時に持替えなければならない場合もある訳でして。
今回はそんな曲について検証してみましょう。

持替えをするパートは?
フルート・セクションの中でピッコロに持替えるパートは主に3番又は2番奏者ですが、稀に1番が持替える場合もあります。主なオケ曲でその辺ザッとまとめてみると、こんな感じです。

曲目 1番奏者2番奏者3番奏者4番奏者
バルトーク管弦楽のための協奏曲1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
ベートーヴェン交響曲第5番「運命」1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -
ベートーヴェン交響曲第6番「田園」1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -
ベートーヴェン交響曲第9番1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -
ベートーヴェン「エグモント」序曲1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
ベルリオーズ幻想交響曲1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
ブラームス交響曲第4番1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
ブラームス悲劇的序曲1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -
ブラームス大学祝典序曲1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -
ブラームスピアノ協奏曲第2番1st.Fl.&Picc.2nd.Fl.
ビゼー歌劇「カルメン」1st.Fl.&Picc.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
ビゼー組曲「アルルの女」1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.
ドビュッシー交響詩「海」1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -
ドヴォルザーク交響曲第8番1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
ドヴォルザーク交響曲第9番「新世界」1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
グリーク組曲「ペール・ギュント」1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.Picc.- - - - -
グリークピアノ協奏曲1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
ハイドンオラトリオ「四季」1st.Fl.&Picc.2nd.Fl.- - - - -- - - - -
ホルスト組曲「惑星」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.Picc.&AltoFl.
リスト交響詩「前奏曲」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
マーラー交響曲第1番「巨人」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
マーラー交響曲第2番「復活」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.Picc.
マーラー交響曲第5番1st.Fl.&Picc.2nd.Fl.&Picc.3rd.Fl.&Picc.4th.Fl.&Picc.
マーラー交響曲「大地の歌」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.Picc.
ムソルグスキー交響詩「禿山の一夜」1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -
モーツァルト歌劇「魔笛」1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
プロコフィエフピアノ協奏曲第3番1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
プロコフィエフヴァイオリン協奏曲第1番1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
ラヴェルバレエ「ダフニスとクロエ」1st.Fl.2nd.Fl.Picc.AltoFl.
ラヴェル(展覧会の絵)1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
ラヴェルボレロ1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.Picc.- - - - -
ラヴェルピアノ協奏曲FlutePicc.- - - - -- - - - -
レスピーギ交響詩「ローマの松」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
ショスタコーヴィチ交響曲第5番1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -
ショスタコーヴィチ交響曲第7番「レニングラード」1st.Fl.2nd.Fl.&AltoFl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
ショスタコーヴィチ交響曲第8番1st.Fl.2nd.Fl.Picc.Picc.
ショスタコーヴィチ交響曲第10番1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.Picc.- - - - -
J.シュトラウスワルツ「美しく青きドナウ」1st.Fl.2nd.Fl.&Picc.- - - - -- - - - -
J.シュトラウスワルツ「春の声」FlutePicc.- - - - -- - - - -
R.シュトラウス交響詩「ドンファン」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
R.シュトラウス交響詩「ツァラトゥストラ」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.Picc.
R.シュトラウス交響詩「英雄の生涯」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.Picc.
チャイコフスキー交響曲第4番1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -
チャイコフスキー交響曲第5番1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
チャイコフスキー交響曲第6番「悲愴」1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
チャイコフスキースラヴ行進曲1st.Fl.2nd.Fl.Picc.Picc.
ヴェルディレクィエム1st.Fl.2nd.Fl.3rd.Fl.&Picc.- - - - -
ワーグナー歌劇「タンホイザー」序曲1st.Fl.2nd.Fl.Picc.- - - - -

楽器を持替えるのに必要な時間
楽器の持替えに必要な時間は、最低でも5秒程度。つまり、例えば「Allegroで4/4拍子」でしたら、少なくとも3小節分の休みは欲しいところです。
ところが世の中には、そういう“気配り”が全然ない曲があるものなんですね。真っ先に思いつくのは(業界では有名かも知れませんが)バルトークの「管弦楽の為の協奏曲」。ここの第3楽章ではピッコロのソロが終わった後、たった1拍でフルートに持ち替えなければならない場面があるのです。そのままピッコロで行っちゃいたいところですが「ピッコロで吹いちゃダメです」と、ちゃんと作曲者の但し書きがついています。まあそれでも、何とか工夫すれば可能といえば可能ですが。
ところが、更に凄いのがありました。トマジ作曲の「アルトサキソホン協奏曲」ここの第2楽章と第3楽章はアタッカ(=間髪入れず)で突入しますが、一瞬ブレス記号(❜)が挟まっています。その間にフルートからピッコロの持替えがあるのです。ほぼ休みは無いに等しい。。。
藝フィルでは何度か演奏しましたが、オケの中で「ちょっと待ってー」とパニクっているのは多分自分だけでしょう(笑)で、どうしたか?こうして乗り越えました!

フロントページの写真です。

特殊楽器奏者への気配り
このようにピッコロに限らず、特殊楽器奏者にどの程度気を配ってくれているかは、作曲家によって大いに違いが出てきます。具体的には主に「音域にそぐわないダイナミクスを要求していないか」「待ち時間が長過ぎないか」「酸欠になりそうな程キツいフレーズがあるか」そして「持替え時間が短か過ぎないか」。大雑把な自分の独断と偏見では…

ベートーヴェン…△
ベルリオーズ…○
ブラームス…×
ドヴォルザーク…△
マーラー…×
ラヴェル…○
ヨハン・シュトラウス…○
リヒャルト・シュトラウス…○
ショスタコーヴィチ…△
チャイコフスキー…×
ヴェルディ…○ という具合です。

因みにバレエ音楽、例えば「ドンキホーテ」(ミンクス)・「コッペリア」(ドリーブ)・「ジゼル」(アダン)等は、知名度はちょっとマイナーかも知れませんが、ピッコロにはどれも◎!実に吹き甲斐のある曲ばかり。強いていえば、あまり休みがなくて忙しいのですが。

藝フィルではよく現代音楽も演奏しますが、昨今アルトやバスフルート等は元より、“フルート属”の壁を乗り越えて持替えさせる曲がちらほら出てきました。例えばリコーダーやスライドホイッスル等。これらはフルート奏者でなくても吹けるので、他の管楽器や弦楽器、打楽器奏者に回すこともあります。
ですが、やはり持替えるからには、それなりの音楽的効果が無くてはなりません。場合によってはいろいろな工夫も必要です。
そんな自分の一体験談を過去に掲載しました。まあ、ご参考まで…。

スライド・ピッコロ
FLUTE, YUMO Theory

Pのイメージ

もう10年位昔に書いた記事ですが、大事な事ですのでここでもう1回おさらいしてみようと思います。
オーケストラって、フォルテで「バーン」と鳴るイメージが強いと思いますが、意外と小さな音、つまりP(ピアノ)で吹く事もとても大切なのです。それも、そんじょそこらのPでなく(笑)、スーパー・ピアニッシモとも言える位の、小さな小さな音…それについてのこんなお話。


尊敬するピッコロ奏者、時任和夫氏(元フィラデルフィア管弦楽団)は、強弱記号のPについて、こう話していました。
Pとは音の弱さではない。Pとは、その音楽が醸し出す空気である」
「例えば、森の中の湖畔の朝。朝もやのかかる中、森の中から鳥のさえずる声が聞こえる…何もかもが静寂…これ!これこそがピ・ア・ノ」等。

実際、ピッコロにとってPPPを出すのは至難の業。フルートでも高音域ではかなり難しい事です。
そもそも単純に音を小っちゃくするだけだと、客席の後ろの方には聞こえなくなってしまいます。聞こえなければ意味がなく、「遠くまで聞こえる小さい音」でなくては、という訳です。

とはいえ、それにはどうすれば良いのか?残念ながらその具体的な方法については、ここで論じるのは無理かなと思える位、奥深い話ですが、ただ、スーパーピアニッシモからスーパーフォルティッシモまで自在に操れる時任氏の仰る通り、強弱については「音」の強さよりもその音や音楽から湧き出る「情景」のイメージを持つ事が大切だなと思うのです。
まあ、参考までにピッコロでPPを吹いている時の、自分のアンブシュアを載せておきましょう。


話はちょいと変わりますが、最近「パワースポット」や「ホットスポット」等、特定の場所の「スポット」という呼び名がよく聞かれますが、そういえば、自分が今までに見た景色の中で、このお話に匹敵するとっておきの「ピアニッシモ・スポット」があったな、とふと思い出したのです。
それは20年位前にバイクで走った道路、国道292号線(別名「志賀草津道路」と呼ばれ、日本で一番標高の高い地点を走る国道)のとある休憩所、とはいってもこんな風にちょっとした駐車スペースとベンチがあるだけ。

これはその道路から望む「横手山」。志賀高原から草津に向かってこの山を見ながら峠を登り、暫く行った所にその場所はありました。
バイクを降りてひと休みした時、あまりの静けさに感動しました。シーーーーン…とした空気の中、遥か彼方の山々からかすかに聞こえる鳥の声、時折フッと吹き渡る微風…今でも忘れられません。
時任氏のお話を思い出しながら、ピピッ!ときたのがまさにその場所でした。自分にとって最高の「ピアニッシモ・スポット」です。

ではここに、他にも印象的だった「PP・スポット」を幾つか。

北海道の何処か。そよ風になびく夏の草花…。
軽井沢。霧雨の国道18号線。
真冬の長瀞(埼玉県)。

楽譜にPPPを見つけた場合、ご自身でこのような独自の場所を決め、イメージして演奏するのも良いかもしれません。