チリ・レポート〜ヴァルパライソと大使公邸

チリでの公演はあと1つのみとなったが、今日はオフ日ということでツァーに参加した。

恥ずかしながらこのヴァルパライソという地名は、世界遺産に登録されているにも関わらず、今回初めて知った。サンティアゴから車で西に120km程走った所にある、チリを代表する港町である。

生憎の雨だったが、これでも前日は台風並みの荒れ模様だったらしく、天気は納まった方だそうだ。

港をぐるりと囲むように小高い丘が面していて、その斜面にぎっしりと建てられたカラフルな家…なる程日本では絶対見られない芸術的な風景だ。これらの家は船体を塗装した時の余ったペンキで塗られたからだそうである。

サンティアゴの街並みは本当に落書きだらけなのだが、ここで見られるのは単なる悪戯描きだけではなく、芸術家達に依る力作も多い。オケのメンバー達はここでのんびり散策をしたりお土産を買ったり写真を撮ったり、まさにつかの間の休日を満喫していた。

そして夕方からは在チリ日本大使公邸にてレセプション。一旦ホテルに帰って僅か25分でスーツに着替えて出発という、オフの割にはハードなスケジュール。よりによって自分は既に美味しいチリワインで結構酔っていたので、公邸にてきちんと振る舞う事は最初は至難の業であった。

ところがここに一人、凄い方がゲストでいらしていた。一昨年ノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章さんである。梶田氏はチリにこの度新設された特大の天体望遠鏡によって専門のニュートリノの研究するためにいらしたそうだ。オケのメンバーと楽しく話をし、光栄にもツーショットを撮らせていただいたり…とにかく気さくで素敵な方であった。この演奏旅行のとても良き思い出の一つであった。


カテゴリー: 日常・趣味 | タグ: , , , , | コメントする

チリ・レポート〜いよいよ本公演

昨日まで講習会や合同演奏会等の仕事をしたのは、自分も含めた藝フィル第1陣のメンバーで、全体の約半数程。追ってパリ経由で飛んで来た第2陣、そしてアメリカ:ダラス経由で飛んで来た第3陣が、この合同演奏会終了後についに集結し、翌日の為のリハが行われた。全メンバーが地球を包むようにして日本の裏側に無事に集まった訳である。

今回の本公演はモネダ宮殿から500m程の所にある市立劇場。古き良きヨーロッパ文化の薫り漂う素敵な建物だ。日本ではまず見られない外観&内装である。

そしてプログラムは…
♪ スメタナ:交響詩「モルダウ」
♪ ベートーヴェン:交響曲第7番
♪ ドヴォルザーク:交響曲第8番
♪ カセレス(チリの作曲家):テノールと管弦楽の為の「Las Preguntas」(初演)
♪ 松下功:和太鼓協奏曲「天地饗應」
♪ 松下功:和太鼓協奏曲「飛天遊」
これらを24&25日の2回にばらけて演奏、そして両日共アンコールとして外山雄三:管弦楽の為のラプソディーで締めくくる。

本プロの交響曲の前に演奏された和太鼓協奏曲は、実に迫力満点で、これぞ「和」の極致と言わんばかりにチリのお客さん達を圧倒した感じだ。だがこれの後のそれぞれの交響曲、そしてアンコールももの凄く盛り上がり、最後にはスタンディングオベーションまで頂いた。

お客さんが総立ちで満面の笑みで拍手を送って下さるのを見て、実はちょっと感動してウルっときてしまった。もう長いことこのオケで吹いているので、いろいろ嫌な思いや不甲斐なさを沢山経験してきただけに、こんなに拍手が頂けるなんて…藝フィルはつくづくいいオケに成長したものだと思っている。

因みに和太鼓奏者の林英哲氏はなんともう還暦を悠に超えているそうだ!なのにまるでラオウのような肉体。確かにあらゆる楽器の中で、一番演奏するのにカロリーを消費するからとはいえ、日々のトレーニングも欠かさないそうである。

リズムの切れや力強い響きもさることながら、自分はそのバチが皮に当たるその瞬間の音色がとても綺麗だと感じた。なので至近距離で聴いていても「うるさい」とは感じず、逆にとても心地良いのだ。やはりどんな楽器も基本は「音色」なのである


カテゴリー: オーケストラ, コンサート, 演奏会報告 | タグ: , , , , , | コメントする

チリ・レポート〜合同演奏会

現地との交流イヴェントはまだ続く。今度は青少年オケFOJI(スペイン語で“フォヒ”と発音する)との合同演奏会だ。各パートの首席に藝フィルのメンバーが座るのだが、今回はこの旅のスペシャルゲストとして、世界的な和太鼓奏者:林英哲氏も共演する。プログラムは…

1.アンティキュラ…チリの作曲家による新作だそうだが、はっきり言って酷い曲だ。音列の微妙な変化を表現しようとして失敗した作品だと思う。
2.タイスの瞑想曲…今回唯一のオリジナルクラシック曲。ソリストは藝大の学長:澤和樹先生。
3.ダンソンNo.2…これはFOJIの持ち曲なのであろう。もの凄くノリのいい南米独特のダンス音楽。テンポや拍子が色々と変化してとても面白い音楽。
4.幻想曲「とおりゃんせ」…これはG大のM先生による編曲&指揮。現地の日本人学校の子供達(多分5〜18歳位?)がオケの前で法被を着て歌い、そして林氏の壮観な和太鼓も加わってダイナミックなアレンジに仕立ててある。冒頭では自分がピッコロのソロを篠笛風に演奏する場面も。

尚、最初の3曲はこのFOJIの常任指揮者が振ったのだが、これが困った。スペイン語しか喋らないので、練習番号など「~番から」という時などはつくづく数字を予習しておいて良かったと思った。それよりも振り方が理解しがたい。何を振っているのかいちいちテンポを探りながら吹かねばならなく、余計な神経を使った感じである。


会場は練習も本番も市の中心部にドンと聳えるモネダ宮殿。


「宮殿」といえば聞こえは厳かだが、実際には宮殿地下のフリースペース。ここにオケと椅子がザッと並ぶ。繰り返すが6月のサンチャゴは真冬。写真の通りの吹き曝しスペースなので、ずっと座っていると足元から寒さが浸みてくる。本番の日は日本から持って来た使い捨てカイロをフルートのメンバー達に配ってあげた。案の定彼等にとってはこれ、初めて見る代物だったようで、揉んでいるうちに熱くなってきたこの物体に歓声をあげていた。

本番の盛り上がりは想像以上だった。実はリハは前日に1回のみ、ゲネプロも無く、特に日本人学校の子供達はぶっつけ本番だ。なのにそのパフォーマンスは完璧で素晴らしく、そして可愛らしかった。お客さんは脇の通路にまで溢れ、恐らく初めて見るであろう和太鼓に大歓声を浴びせ、大盛況のうちにこの“フォヒ&藝フィル”が終わった。

フルートの子達は多分16~18歳位。昨日の学生達同様、とても上手かった。モーツァルトやヒンデミットをさらっていて、何だか初々しかった。今後も頑張って欲しいと思う。


カテゴリー: オーケストラ, コンサート, 演奏会報告 | タグ: , , , | コメントする

チリ・レポート〜現地で講習会

幾つかの公演に先立って、まず藝フィルのメンバーが現地の子供達を指導するというムチャブリがある。

英語は殆ど通じないとも言われていて、こちらも多少はスペイン語を予習しておかねばならなかった。

指導とかいうから中級程度の子供を予想していたのだが……..

実際は違って皆かなり上手!ついでに英語も普通に喋っている。レッスン曲もプロコフィエフのソナタ、イベールのコンチェルト、タファネルの「魔弾の射手」幻想曲等々。どうやら地元の音大生らしい。トータルで僅か2時間半しかなかったので、もう時間の経過を忘れる程必死で教えていた。

ひとつ気づいたのは、皆テクニックはかなりあり、きちんと吹いているのだが、そこから先に踏み込んでいない。メロディーやフレーズの持つ様々なキャラクターやカラーを表現する事については、まだまだ勉強の余地がある。

この点については今の日本の音大生とあまり変わらないという事だ。だが自分は何となく、何となく南米のクラシックのレヴェルを見下していたかも知れず、今回の彼らとの出会いは全然そんな事はないと思い知らされた気分である。

そして皆楽しそうにスペイン語でベラベラ喋っていてとても人懐っこく、南米本来の明るい人柄をつくづく感じた楽しいひと時であった。


カテゴリー: レッスン, 感想・意見 | タグ: , | コメントする

チリ・レポート〜過酷なフライト

海外渡航は久しぶりだ。だが今回はこれまでで最も長く過酷な旅である。

まずはパリまで12時間のフライトとパリでの7時間のトランジット。太陽と一緒に移動する形になるので、外はなかなか夜にならない。ドゴール空港到着は現地時間の午後4時。1年で最も昼が長い時期なので、夜8時になってもここはまだ日が沈まない。だが体内時計は正直で、徹夜しているのと同じ状態だ。23時40分にサンチャゴ行きが出発する頃には日本では翌朝になっているという身体。なので往きは機内よりもトランジットの時の方が体がきつかった。

そして更にここから14時間。外は暗いので寝ていれば良いのだが、これもそういう訳で身体はそう簡単にはいうことを聞かない。眠いけど眠れない、みたいなことを繰り返しているうちに外は次第に明るくなり、ようやくサンチャゴの「アルトゥーロ・メリノ・ベニテス空港」に着いた。

地球を半周もして南米に入ったんだなという実感は、ここの寒さで初めて湧いてきた。チリの6月は真冬。パリでは33度という暑さだったので、まさに別世界。天候は曇り。空港内も何だか寒々とした雰囲気であった。

今回の宿泊先である、サンチャゴのシェラトンホテルまでのバスの車窓の風景にはちょっとしたカルチャーショックを受けた。貧しそうなバラックが並び、建物の壁は落書きが続き、川沿いにはゴミが散乱、かと思えば名産のワインの葡萄畑が見え、そしてすぐ向こうにはアンデスの美しい山々がそびえる。街に入っても近代的な街並みと粗末な建物のギャップは途絶えず、チリという国の貧富の差がもうこの時点で感じられたのである。

今回のコンサートを聴きに来る人達はどんな人達なんだろう…結構裕福な人達なのか、とにかく明日からの仕事、期待と不安が入り混じった気持ちである。そんな中、ホテルはダブルの部屋を貰えてラッキーであった。つかの間の休息。


カテゴリー: オーケストラ, その他研究・考察, 日常・趣味 | タグ: , , , | コメントする