見事にやらかしちゃった人

先日、某楽器店のフルート・フェアの一環で、アマチュア・アンサンブル・コンテストがあった。

数年程前から、このコンテストに参加するひとつの団体の為に自分は自作を作ってきた。最初の2回は組曲「グリーン・ゲイブルズ」(赤毛のアンを題材とした曲)からの抜粋、3回目は「影」という曲を書き下ろした。それぞれ「愉しい曲」「美しい曲」「カッコイイ曲」等のコンセプトを基に作ってきたが、今回は「面白い曲」を作ってみた。

さて今回、コンテスト用に作曲するにあたって、実は自分はあるトラップを仕掛けたつもりだった。曲名は『ブランデー・ミルク協奏曲』。何となく題名がかの名曲「ブランデンブルク」に似ていることに気づかれたと思う。その通り、これはパロディーである。このバッハの全6曲から成る曲集の中でも、特に印象的な部分をピックアップし、ピッコロとアルトフルートを前に出し、普通のフルートのアンサンブルが伴奏をするという協奏曲形態にして、面白可笑しく仕上げたつもりである。

なので、聴いていると「あ、○番の□楽章だ」「△番の◇楽章だ」と、いろいろな部分が見え隠れし、挙げ句の果てにはオルガンの「トッカータとフーガ」まで出てくる。

ところでこのコンテストの審査は、昔から(多分)プロのフルーティストで構成されている、とあるアンサンブルの方達がされているようであるが、卑しくもプロのクラシック奏者なら、ブランデンブルク協奏曲ぐらいはメンバー全員が熟知しているべきだろう。まあ別に6曲全部は知らなくとも、フルートが関わる第5番第2番、リコーダーの入る第4番位は最早ノルマ、弦楽器だけの第3番だって管楽器奏者だから知らない、なんて言ってほしくない程の名曲中の名曲だ。

で、これらの最も目立つ各所をふんだんに引っ張ってきたこのパロディーを聴いて、審査員の方々はどう評価されるのか?本コンテストでは演奏直後に審査員の一人が感想を述べられるが、それも含めて評価の度合いで、審査員の技量がある程度判ってしまうというトラップなのだ。

それではここで、本番当日のその述べられた感想を、ほぼそのまま書き出してみる。

『そうですね…初めて聴く曲ですので、何を言っていいかアレですけども、全然違う飲み物とか曲を合わせて作っていかれた、と始めに言われていたので、どういう風になるのかと思いながら聴かせて頂きまして、違う飲み物というのはピッコロとアルトフルートなのかな、と思いながら聞いておりまして、それが混ざった美味しそうな音色とかも聞こえてきましたし、凄く良かったなと思います。
あと、後ろのフルートの伴奏とソロとの対比がもっと明確に聞こえてくると、もっと面白さが見えてくるのかなと思いました。一番良かったのは、皆さんが楽しんで吹かれていたこと、それが一番印象に残っております。
なかなか難しいですけど、こういう新しい曲を私も吹いたことがあるんですけども、そこに向かう、作られた方がどういう思いで作られたかとか、考えながら、自分達でそれをこうしてみよう、ああしてみようってやりながら練習していく合わせていくっていう楽しみは、凄く楽しい時間が今日までの間に沢山あったと思います。まあ、大変な時間もあったんだと思いますけれども、でもまあ皆さん今回は少しは思い描いていたような形で表現できていたのであろうな、という風にこちらには聞こえて来た、と思っております。ですので、更には今演奏した中で、もっとこうするともっとこうできたのになという思いが皆さんあると思うので、それをもう少しこなして、またこの曲を演奏して完成度を高いものにして、聴いている人にもこんなに面白い曲があるんだ、というのを知らせて頂ければ嬉しいかなと思います。』

…まあ確かに演奏自体については、自分も同じような事を感じた。だが、やはりこのコメントには心底呆れてしまった。その程度しか聴く耳を持っていなかったのか、もしかしたら寝てたかも知れない。何を言うべきか相当困っておられたのが手に取るように判るが、少なくともこの方、原曲「ブランデンブルグ」は殆ど知らないということが露呈し『うわぁ、見事にやらかしてくれたなァ』という印象である(そもそも、ブランデーとミルクなんか混ぜて、美味しいのか!?)。

コンテストなので、一応優勝とかナントカ賞とかが貰えるが、まあアマチュアなので何賞であろうが、それはどうでも良い。演奏者の皆さんには取り敢えずやり遂げた、という思いで帰りの電車に乗れればそれで十分なのである。

だが、ふと思った。「アマチュア・コンテスト」の「アマチュア」って誰のことなのかな?と。


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