魂のウィンドチャイム

昨年9月のアマチュアフルートアンサンブル“えむ”のコンサートでは、プログラムの一つに星座を音符にした「星空紀行」という自作を披露した、という記事を先日書いたが、この曲の中ではウィンドチャイム(別名:ツリーチャイム)がオプションとして使われている。キラキラと輝く星のような音色を放つ素敵な打楽器であるが、当時このウィンドチャイムを担当したのが、メンバーの一人、黒一点のIさんであった。

Iさんは普段とても大人しい方だ。余計なことは一切喋らず黙々と練習し、それでいてやるべきことはきっちりこなす。なので女性ばかりのこのアンサンブルでもひと際信頼を得ていた。ウィンドチャイムを任されたIさんは、自宅でも張り切って相当さらっていたらしい。曲中5回、そして終わりにもう1回「キラキラキラ…」と鳴らす設定だが、その練習の成果あって、彼は本番でも美しく奏でてくれた。指揮をしていた自分もとても嬉しかった。

ところがこの演奏会の約1ヶ月後、Iさんが急逝してしまった。癌だったそうだ。全くそんな様子はなかったのに…ショックで天を仰いだ自分だったが、後日ふと思い立って追悼の曲を作曲し、彼を偲んで演奏することにした。

名付けて『“えむ”のレクィエム(鎮魂歌)』。三部形式のこの曲の中間部には賛美歌第320番「主よ御許に近づかん」を引用している。キリスト教のお葬式でよく歌われる歌だ。そして、この曲の最後の和音の時に1回だけこのウィンドチャイムを鳴らすようにした。楽器はステージ外にセッティングし、Iさんが天国で応えてくれる、という演出だ。

そうして年が明けて今月の21日(日)、教えている3つのアマチュアフルートアンサンブルの合同演奏会「くつろぎコンサート」にて、この曲を演奏。ウィンドチャイムは家内が担当し、天国のIさんに届ける思いでしめやかに、そして無事に演奏を終え、関係者の涙を誘った。

ところでこのウィンドチャイムというのは結構デリケートな楽器で、ちょっとした振動でも全体がワラワラと鳴ってしまう。綺麗な音色なのだが、必要ない時に鳴ったりするので取扱いには要注意だ。だから当日は、絶対に風や振動などの影響を受けない所に人知れず静かにセットしておいたのだが…。

家内曰く、何故か何もしないのにひとりでに鳴っちゃって困ったそうだ。自分はステージ脇にて進行のMCを担当していたのだが、確かに関係のない時に控え室から「キラキラ」と聞こえてきて「誰だ鳴らしてんのは?」なんて思っていたのだが、、、

もしかしたら本当にIさんが来て鳴らしたのかも知れない。

まあ正直言って自分は魂とか霊とか一切信じない現実派なので、多分これもちょっとした空気の流れや温度変化等の物理的な作用によるものに違いないのだが、このように彼の魂がやって来て鳴らしたというのであれば、それはそれでイイ話ではないか。

残念ながら50代半ばにしてこの世を去ってしまったIさん。あまりにも早過ぎる人生の終止符であったが、彼の思い出を胸に更に良い音楽を作り、アンサンブル活動をしていきたいものである。


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