2㎡の楽屋

10ヶ月前、つまり今年1月の或る日、突然同級生のクラリネット奏者からメールが来た。荻窪音楽祭にて一緒にデュオをやりましょうという。日にちは空いていたので、勿論二つ返事でお引き受けした。

荻窪音楽祭っていうからには、多分杉並公会堂か何処かでいろいろなミュージシャン達が入れ替わり立ち替わり演奏をしていく一貫のコンサートの一部なのかなと思っていた。が、よくよく聞いてみたら荻窪音楽祭ってのはもっと町ぐるみの大掛かりなもので、一定期間中区内のあちこちの会場にて一斉に大小様々なコンサートが開かれるそうだ。

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今回のデュオもそんな訳で、ひとつの会場を借りきった丸々2時間のリサイタル形式。リハも入念に重ね、そしてこの度無事に終了した。面白い事にリハの日はやる度毎に悉く雨に見舞われたが、本番はその鬱憤を晴らすかのようにスカッと晴れて暖かかった。会場へのアクセスの際、やはり天気は大事な要素だなとつくづく感じる。

さてその会場だが、荻窪駅改札から歩いて12〜3分の所にある「かん芸館」

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ここには数年前、知人のチェロリサイタルを聴きに客として来たことがあり、小じんまりとした素敵なサロンだな〜という印象があった。その時の休憩時間、建物を出て階段の下で寛いでいたら、何故かそのチェリストも一緒に出て来て、後半の開演まで談笑していた記憶がある。

で、その理由が今回出演者として来て初めて理解した。出演者用控え室が無いのだ。いや正確には1部屋だけある事はあるが、もの凄く狭い。見たところ約2㎡、畳1畳位か。多分自分がこれまでの本番で経験した最狭の部屋だ。

今回の共演者は女性2人。ピアニストはその同級生のお嬢さんである。だからこの楽屋はこの親娘に使って頂き、自分はトイレで着替えた。多分この方が、あの狭い部屋を使っているお二人よりは、まだ快適だと思う(広さはほぼ同じだ)。

とはいえ、開演前と休憩中は本当に自分の居場所がない!楽器を手入れするスペースすら確保するのが難しい。なる程結局演奏者が寛げるのは屋外しか無かった訳だ。今日が晴天でつくづく良かった。

この「かん芸館」は個人所有の建物で、コンサート等ができるサロンと展覧会ができる展示室がある。ホームページもある。オーナーの女性は使用時間や規則について事細かく、注意や注文を付けてくる。ガサツなガクタイに対して綺麗に使って欲しいという思いがあちこちに感じられるが、それはまあ当然の事であり、自分もそんなに気にはならない。それよりもここの設備や設計について、オーナーさんはいろいろ自慢はしていたが、自分としては内心首を傾げざるを得なかった。

多分パーティーの為だと思うが、サロン内にはデンと設けられたキッチンがあり、その存在だけでなく、冷蔵庫のコンプレッサの音などは邪魔だ。外部の音漏れも気になる。立地は閑静な住宅街なので、外の喧騒が聞こえてくる事は殆どないのだが、この日は展示室にて個人の展覧会も丁度やっていて、訪問者の話し声や笑い声が本番中に聞こえて来た。

そんな使い勝手の悪さも、ちょいと2〜3時間程我慢すれば別に大した事でもなく、何より素晴らしい共演者のお蔭で本番自体はとても気分良く、最高のテンションで終える事ができた。

さて終演後は扉のすぐ外でお客さんをお見送り(というか、そこしかスペースがない)。すると例のオーナーが「ここじゃ展示室の入り口で邪魔だから」とまたサロンの中へと自分の袖を引っ張る。が、流石に無視した。そんな事いちいち対応していられない。

総てのお客様をお送りしたらまたトイレで着替え、長居したくないのでハイさッと退館。
とても素敵なサロンだった。でも自分のコンサートではまず借りる事はないだろう。


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