オーケストレーションの奥深さ

Gフィルは略さないでいうと「藝大フィルハーモニア」だが、もっと正式には「東京藝術大学管弦楽研究部」という。学生の技術や知識の向上の為に「モーニング」やら「指揮科試験」やら、様々な局面からまさに“オーケストラを研究する”のが本来の仕事な訳だが、今日はその中の一つ「管弦楽法実習」という科目があった。

「管弦楽法」…まるで法律みたいな堅苦しい呼び名だが、横文字ではオーケストレーション、つまりオーケストラ曲を作曲するにあたって、どの楽器にどのような音を配分していくかという方法論である。作曲科では必須課題だが、自分も学生の時に選択科目としてこれを履修した経験がある。

本科の学生は、2年次にシューマンなどのピアノのためのシリーズ物を課題として出され、それをオーケストラ用に編曲する。で、実際にそれを演奏してみるのが今日の実習であり、一年に1日だけ、この時期にある。

作曲科の学生にとっては貴重な一日だろうと思うが、ひと昔前はかなりいい加減な内容だった。課題曲というものはなく、しかも別に作曲科でなくても応募できた。皆適当に何か書いて来て、曲もバラバラ楽譜もバラバラ、中には途中までしかできていないのもあったり。

今ではそんな事はなく、パート譜もきちんと製本されている。今回は全12曲から成るチャイコフスキーの「四季」で、各曲毎に編曲者は勿論違うが、それが一冊の小冊子になっている。

殆どの学生達は、多分オケ曲を書くのは初めてだろう。なので、実際にこれを音にしてみると、いろいろ面白い事が生ずる。

一番多いのは写譜ミス。手書きのパート譜故、あちこちで時折不協和音が響く。あとはその楽器の音域外の音が書かれていたり、楽器の持ち替えやミュートの脱着が時間的に不可能だったり。何より、理論上は可能でも実際演奏してみるととんでもなく難しいパッセージだったり。

とにかく、全曲をザッとリハーサルして、そういう不具合があれば、楽員達はそれをパート譜にメモしておき、各編曲者はそれぞれ休憩時間にチェックしたり直接指導を受けたり。それがこの光景。

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休憩後はまた最初から本番形式で通し、その録音を元に多分後でまた作曲科の先生の指導を受けるのであろう。勿論この短い休憩時間内で、全ての問題が解決する訳ではない。何よりこの「オーケストレーション」というものは実に奥が深い。曲はチャイコフスキーなのに、音楽はチャイコフスキーっぽくないという、不思議な現象が起こる。

具体的な理由は判らないが、何となく経験上そんな感じがするのだ。勿論、できるだけチャイコフスキーのオーケストレーションに近づける、というのではあまり意味がない。寧ろここでは、それぞれ好き勝手な事をして、失敗したり顰蹙を買ったりする方が勉強になると思う。

とはいえ、どの編曲もなかなかよくできていた。純粋に「いいオケ曲にしたい」という真摯な思いが譜面からも伝わり、気持ち良く終えられた。

なのに、何で4年生になるとモーニングであんな曲ばかり出てくるのだろう…?


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