多趣味の陽気なお爺サン

先日、以前ちょっとお世話になったとあるお爺さんが、92歳にて天寿を全うされたので、お葬式に参列して来た。

このお方(Iさんとしておこう)、自分の師匠にフルートを習っていたのだが、他にも実にいろいろなご趣味をお持ちであったようだ。

和楽系では民謡・謡曲・長唄・小唄・小鼓・能管・篠笛・津軽三味線・民踊・二胡、洋楽系ではフルート・ピッコロ・ドラム、社交ダンス、そしてスポーツ系ではゴルフ、という具合!凄い量だ。

まあ、そんな師匠繋がりで自分もお付き合いさせて頂くことになり、例えばI氏の旭日章授賞記念パーティーの生BGMを自分がプロデュースしたこともあれば、師匠の退官パーティーに来賓としてご招待したこともあれば、銀座教会の音楽礼拝にいらして下さってその後食事をご馳走になったこともあったり。とにかく気さくで陽気なお爺サンで、自分もIさんが大好きだった。

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前列真ん中のご老人。その右に師匠。後列右端が自分。

ところで実際、Iさんのフルートの腕前はどうであったか?

やはりお年を召されてから始められたので、レッスンはそれなりに大変だったようだ(笑)だが、既に能管等経験済みだったので音自体はすぐに出せたそうだ。とはいえ、能管とフルートでは長さも重さも楽譜も違う。なかなか脳からの命令が指先まで届かず、師匠も一緒になって四苦八苦したらしい(笑)でもIさん自身もそれは解っていて、毎回終わってからレッスン代を差し出す際に「今日の『苦痛料』でございます」と仰るそうだ(大笑)因みにその封筒の中身、いつもチョット多めに入っていたそうである。

師匠曰く、かくなる上は何かオハコ(十八番)を作っていこうと考え、ヘンデルの「ラルゴ」とグノーの「アヴェマリア」を用意して、ひたすらこの2曲をレッスンしていったそうな。そういえば先の“旭日章”の時は、確かIさんご自身も演奏を披露し、その「ラルゴ」と闘っていた記憶がある。

その後間も無くしてIさん、総入れ歯になっちゃったらしく、しかもどうもそれがフィットしづらいようで、特に笛を吹く時に外れて口から出てきちゃうそうだ。師匠は失礼ながらもそれが可笑しくて、いろいろな意味で困ったと仰っていた。そのせいか、例のオハコすらヤバくなってきたらしい。それでもIさん健気に頑張っては「苦痛料」をお支払いして帰って行く…

他のご趣味もこんな感じだったかどうかは知らないが、例えば小鼓に関しては、とある二胡奏者のCDアルバムに共演者として参加しているし、YouTubeには舞台で民謡をバックに踊る様子がアップされている。とにかく余生を思いっ切り謳歌していらっしゃったようだ。当然これらのご趣味にかけるお金の額も半端なく、楽器に関しては和洋問わず最高級の物を所有。そんなIさんの正体は…

実はとある信用金庫の理事長、名誉顧問を歴任し、地区の社会福祉協議会の会長という、凄い肩書の方なのだ。そんな訳で先日のお葬式、自分が今までに参列した中では最大級のそれであった。思わずここにアップしたくなるような豪華な祭壇、お坊さんは5人!、何より凄いのはその参列者の数。軽く千人は超えていたか。焼香台に辿り着くまで1時間位かかったし。

本当に沢山の人達に愛されていたのだなと思う。何だかとても寂しい気分だが、天国に行ったら行ったでまた何か新しいことを始めるのかも知れない。心よりご冥福を祈る。

 


 

お葬式にて、ひとつ気になる事があった。Iさんは師匠が且つて教員をしていたS大学の理事、つまり出資者でもあった。なのにあれだけの参列者がありながら、そのS大学の関係者には1人も見かけなかったのは気のせいか。

別に自分にはどうでも良い事だが、同大学音楽学部の危うい現状が垣間見られる気がした。


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