コンサートと餓鬼

先ず、ここでいう「餓鬼」とは基本的には周りの空気を読む力がまだ備わっていない人間を指す。年齢的には乳幼児・未就学児が大部分を占めるだろうが、空気の読めない人間は年齢に関係なく「餓鬼」とする。

エピソード1

毎年12月にG大演奏芸術センター主催で開かれる「障害とアート」シリーズのコンサートでは、その最後に障害者の方達をステージ上に招いて、身近にオーケストラを体験できる機会がある。奏者と奏者の間などにチョコンと座り、迫力あるサウンドが耳元で鳴り響くので、場合によっては相当うるさいだろうが、ともかく貴重な体験であろう。

で、このステージに上がれるのは何も障害者の方達のみという訳ではなく、早い話誰でもOK。その日は近くに座っていたとある団員の家族も聴きに来ていたそうなので、それじゃあ彼の子供もママと一緒に上がってきたらどうかと、自分も周りも彼に提案。パパの活躍ぶりが近くで体験できるなんて、素晴らしいじゃない…と。

ところが、自分もそれに加担した事を結局後悔する事になった。その男の子はいきなりの迫力にビックリしたのか、ステージ上で最初から最後まで泣きっぱなし。曲はフォルテが続くとは限らない。ピアノだったりゲネラルパウゼ(=オケ全体が休んでシ〜ンとなる事)だったりする場面でも「ママ〜、ママ〜」と泣き続ける声が奏楽堂に響いていた。

勿論、こういうコンサートだから他の奇声も時折飛び交い、それは最初から厭わないというコンサートである。終演後そのパパは流石に皆に「申し訳ありませんでした」と謝っていたが、全くそんな事はない、誘った自分達も悪いのだ。乳幼児は泣くのが仕事、読みの甘さを本当に心から反省している。

エピソード2

自分のソルフェージュの師でもある「ブルーアイランド」先生との仕事の時であったが、名称が「おしゃべりコンサート」であっても、喋るのはお客ではなく先生の方だ。

そんな中、まさにピアノを弾き始める瞬間、餓鬼の泣き声が聞こえる。すると先生は弾くのを止めてまたマイクを掴み、「すみません。今泣いているお子さんのお母様、何とかして頂けませんでしょうか?」と客席に向かって話し始めたのである。

そこからが結構長かった。「私には子供がいないので、正直申し上げてお母様の気持ちは解りません。でも云々…」と延々喋り続けた挙句、「どうかお願いいたします」と舞台に膝間づいて最後に客席の笑いを獲っていたくだりは流石であった。


クラシックのコンサートにて、餓鬼の泣き声や話し声は、やはりとても迷惑な雑音である。仮にそんな事全く気にならない程演奏家が集中していたとしても、お客さんはどうだろう?

絶妙なピアニッシモ、或いは気の遠くなるような静寂を味わおうとする瞬間、やはり「エ~ン」「まだァ?」「ママお腹すいた」とか聞こえてきたら、折角足を運んで来たそのコンサートがその一声で台無しではないか?

しかし餓鬼にとっては、それを制御するのは困難である。中にはお行儀の良い子もいるだろうが、大抵は飽きるし、第一そんな暗くて狭い所でじっとしてろという方が酷だ。全ては保護者の責任だ。

それでも子供に生の音楽を聴かせたい、或いは身内がステージに乗っているのを見せてあげたいというのは、ハッキリ言って親のエゴである。子供自身は、大きくなったらそんなのひとつも憶えちゃいないのだ。

先の「障害とアート」や「0歳からのクラシック」「親子コンサート」みたいに最初からハッキリ「子供OK」と謳われているのなら構わない。またホールによっては、親子で別室で鑑賞できる粋な所もある。だが、そうでないコンサートには餓鬼は絶対に来るべきではない。近くでワサワサされてハラハラする他のお客さんの身になってほしい。

昨今、特に困るのが「何々教室発表会」の類いだ。出演者が子供で、その子の兄弟や友達がわんさか来るのはまだいいが、ちゃんと親が管理していないので本番中に泣いたり喋ったり走り回ったりする餓鬼もしばしば。発表会だってコンサートだ。コンサートでのマナーをお客共々一緒に学ぶのも、発表会の目的の一つなのに、それを解っていない愚かな親がいる事はとても残念である。


エピソード3 

ウチのフルート教室の第何回目だかの発表会での事。

生徒の1人がカゼルラ作曲「シシリエンヌとブルレスク」というかなりの難曲を吹いている最中に、やおら2人の餓鬼が客席の全面に躍り出てきて「カニの横歩き踊り」を始めたのである!時に控え室にてモニタを見ていた自分は「あ…」と思ってもどうする事もできず、その生徒には後で「ゴメンね」と謝るしかなかった。その餓鬼共は別の生徒の子供達だった。


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