若い作曲家、ベテランの作曲家

近代・現代の音楽に於いて、フルートのいわゆる“普通じゃない吹き方”というのも、考えてみれば随分種類が増えた。100年程前はせいぜいフラッター・タンギングという“巻き舌”奏法ぐらいしかなかったのだが。

今日から「創造の杜」シリーズが始まり、そんな現代奏法の嵐に巻き込まれる苦悩の5日間が続く。ベテラン作曲家2人、若い作曲家2人によるオーケストラ作品展である。

以下に挙げるのは、そのうちの2曲フルート・パート譜のごく一部である。

ベテランの方はこんな楽譜。今から40年前に作曲されたピアノ協奏曲。

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手書きだが、1段につき1〜数小節しかない。実はこれ、読みやすくする為だけではない。

予想だが、これは「写譜屋」さんによる仕事だろう。1ページにつき幾らという単価で請け負っているので、なるべくページを多くした方が沢山貰えるという仕組みだ。

連符に「5:4」のような“分母”が付いていると、個人的には返って読みにくいのだが…

 

さて、若い方はというと…

これは今年出来た曲だそうである。譜面は完全にコンピュータで書かれ、スコアが完成すると自動的にパート譜も出来るので、もはや写譜屋は不要であろう。従って譜面面(ふめんづら)は綺麗なのだが、ここで“普通じゃない吹き方”が目立ってくる。

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「ホイッスル・トーンを出せ」とある。フニャフニャした隙間風のような音だ。

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「キィをポンポン叩き、ちょっとだけ息を入れろ」とある。

極め付けは

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「頭部管だけで鳥の鳴き真似をしろ」ということだ。

上記の3例は全て同じ曲。他の作品にも「スラップ・タンギング」やら「ジェット・ホイッスル」やら出て来て、もはや普通に吹く場所が比率的に少ない位だ。

それに、ピッコロはもとより、バス・フルートへの持ち替えというのもある。

フルートだけではない、他のパートもなかなかヴァラエティーに富んでいる。動物の鳴き声を真似させられたり、弦楽器などはギターのピックでピチカートさせられたり、挙げ句の果ては小物の打楽器まで持たされたり。

残念なのは、このような特殊奏法がオケの中でよく聞こえるかというと、そうでない場合が多い事だ。速いパッセージをどんなにさらったとて、打楽器の1発のffや金管のファンファーレでもって、虚しく消されてしまう。オーケストレーションというのを真面目に勉強していない証拠だ。全く演奏の甲斐がないというものである。

練習初日の感想としては、完全に若造とベテランの差が出てしまった感じだ。若い作曲家達が「こういう音が欲しい」「こんな効果を求む」と、オケに変わった事をさせる気持ちは解るが、結局メロディー・ハーモニー・リズムという音楽の3要素に向き合う事から逃げているようである。

こういったパフォーマンスを「観る」分には面白いだろうが、「聴き」終わった後の後味は相当悪いだろうとお察しする。

一方、ベテランのお二人の作品には、殆どこのような特殊奏法はない。その代わり完全に「音」で勝負をしていて、その結果音楽に深みがある。作曲というのもやはり、「年齢」もしくは「経験値」がモノを言うのか…

 

そんな訳で、今週金曜日の本番では「現代音楽」が2曲、「効果音」が2つ披露される。

一応リンクを貼っておこう。

藝大21 創造の杜2015「藝大現代音楽の夕べ」

※招待券多数アリ


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