恐るべし暗黙の了解

もう随分昔の話だが、某オーケストラの某定期演奏会にエキストラ出演した時の話。

若かった自分は、気合を入れてG.P開始の1時間以上前にホール入り。一番乗りで楽屋に入り、テーブルの片隅に自分の鞄と衣装をドサッと置いてから、颯爽と舞台で音出し。

暫くすると一人の団員の方が慌てた表情で「湯本君、ちょっと」と呼びに来た。「君が荷物を置いたあの場所ネ、凄く怖い◯◯サンの指定席なんだよ。彼が来る前に別の所に移動しといた方がいいヨ」と親切に教えてくれた。

「じゃ何処に置けばいいですか」と訊き、「ココなら大丈夫」と教えて貰った所に移動。幸い間に合った。

そうだった、この事は前以て知ってはいたが、うっかり忘れていた。他のホールなら「何それ?」だが、このホールはこのオケの本拠地。長年の「暗黙の了解」で陣地が決まってしまっているのだ。

何にも知らない若いエキストラが、こんな風に荷物をドカッと置いちゃった暁には….いや別に規則でも法律でもなんでもないので、勿論罪にはならない。が、相当顰蹙を買うことだろう。

(更に昔だが)部屋の隅に捨てられるように移されていたという噂話も聞く。

だから、このオケが本拠地ではない別のホールで演奏した時も、今度は一応団員の人にちゃんと訊いたものだ。「荷物は何処に置けば良いですか?また暗黙の指定席はあるのですか?」

流石に外のホールではそれはないと、笑って答えてくれたが….実際はどうだろう?やっぱりそこで何十回と本番を重ねると、自ずと誰が何処に荷物を置くか、決まってくるのではないか?


あれから20年程経った或る日。

とある酒の席での、同級生(某フィルハーモニーのVn.奏者:女性)との会話。

「最近の若いトラの子って、平気で楽屋の私の席に荷物置くのよ。ふん!」「何処の楽屋?」「サントリーよ。ふん!」やっぱりそうか。別に本拠地でないのに決まっているようだ。女性楽屋でもだ。ある意味、男性楽屋よりも雰囲気がヤバそうである。

「でも、決まってる訳ではないじゃない」と言ってみた。「そうなんだけどね….でもムカつくじゃない。ふん!」実はその気持ち、まあ解らないでもない。

そう。かくいうウチのGフィルだって、本拠地の奏楽堂の控室では、自ずともう誰がどの辺りに陣取るか、大体決まっている(但し、自分の使う男性楽屋のみ。他の部屋はどうなのか知らない)。

ただウチのオケの場合、エキストラや若造がそこに先に荷物を置いたからといって、あまり厭わない風潮。その隣りとか、或いは別の所に置くのみ。基本は早い者勝ちなのである。別にそれで良いではないか。

20141127

…なーんて事を、独りこの奏楽堂の楽屋で書いていた。今日は出番の関係で、他の人達より1曲早く上がれたのである。

 


カテゴリー: 未分類 タグ: , , , パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください