老人と音

先日、ある還暦をとうに超えたフルーティストのコンサートを聴いたのだが、年輪の刻み込まれたような味わいのある音楽の一方で、単純に「老い」も感じられた。

ソロ曲というのは、やはりオケやバンドのパート譜から比べれば、物理的にキツい。当たり前だが殆ど吹きっぱなしで、かなり体力の要る作業。年をとると、その疲労度は音質やフィンガリングに如実に表れる。

やはり一番気になるのは音。特にそのヴィブラート。かけているのか、かかってしまうのか、とにかくその振幅が非常に細かい所謂「ちりめんヴィブラート」。この方、ノンヴィブのまっすぐな音は出せるのかな?と勘ぐってしまう程だった。

そういえば自分もひどくアガッた時など、音が震えた経験があるが、確かにこれを何とかしようと、この小刻みな振動を更にカバーするようにヴィブラートで誤摩化したりしたものだ。

年齢が嵩んでくるとアガるアガらないに関わらず、プロ・アマに関わらず、このように顎近辺が震えるようになって来るものなのか?

とある年輩の生徒さんなどは、フルートを吹くと顎の近辺の震えがどうにも止まらず、楽器が外れんばかりなので、こちらもあれやこれやと本当にいろいろな事をアドヴァイスしているのだが、なかなか止まらない。

プロともなれば、音質に対する理想やイメージは人それぞれである。ヴィブラートについても然りで、「これが私の表現法」みたいに確立しているかも知れない…がやはり、自分には先のちりめんヴィブラートは疑問だ。

「ちりめん」でなくとも、例えばヴィブラートの振幅が余りにも深いと、長い音が小刻みに切れて聞こえる事がある。音程にも影響が表れる。演歌の下品な歌い方みたいな感じ。また一方、気孔が狭まる事によって声帯が飛び出し「ウッウッ」と低い声が鳴っちゃうヴィブラートもある。どちらにしても、全音符のような「白い音符」が八分音符みたいな音の列挙に聞こえて、「白く」聞こえない。失礼ながらこの現象は、特に年輩のフルーティストにありがちである。

自分もこうなってくるのか?これから何にどう気をつけていくべきかは、まだ自分には判らない。日々のトレーニング量=劣化防止という考え方もまちまちで、自分自身も必ずしもイコールではないと考えている。

プロのフルーティストはヴィブラートの「早さ」と「深さ」をコントロールする術を心得ている(筈である)。特にオケではヴィブラートのかかっていない無垢な全音符を(年齢なんかに関係なく)出さなければならない時もある。プロのくせに「白い音符が白く吹けない」誰かさんみたいにはなりたくないなあと、つくづく思うのである。


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